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青い稲妻  作者: 北村美琴
第1部地球編
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彼女が語った事

「ま、マヤ……」


 突然現れたマヤに驚く圭一と中島。

 マヤは悲しそうな顔をして呟く。


「圭一。昨夜ゆうべ私がした事見てたよね。カプセルを投げたから大丈夫って言ったじゃない。信じてないの?」

「み、見てたよ。君はちゃんとカプセルを投げて、急成長する土だって教えてくれた。信じない訳じゃない。でも……」

「実際に土が完全に穴を埋めるまで、確認しようと思った? だよね」


 圭一の言い訳じみた説明を聞いたマヤは、いたずらっ子の様に微笑んだ。


「そうよね。初めて会ったばかりの人の事を、そう簡単に信じられる訳ないよね」

「ま、マヤ、だから、それは……」

「分かってる。圭一が私の事、少しだけでも理解しようと思ってくれた事が嬉しい。だから許してあげる」


 ホッとしたのも束の間、彼女の視線が気になった。

 中島の方を見ている。

 その中島はマヤの美少女ぶりに、頬を赤く染めていた。


「か、か、可愛い……」


 マヤはニッコリ。


「ありがとう。ところで圭一、この人は?」


 圭一に向き直る。

 圭一は彼を紹介した。


「クラスメートで僕の友達の中島だよ。君の事は話してある。安心して。悪い人間じゃないから」

「は、はい! 中島高志です! 圭一から今日、あなたの事を聞きました。俺、宇宙とかUFOとかそういうのが好きで、圭一からあなたの話を聞いた時、びっくりしたけど、会ってみたいと思いました。正直、圭一が羨ましいです。こんな美少女と会っていたなんて」

「まあ、美少女だなんて。でも嬉しい。私を怖がらない人がまだ居たのね。あなた達なら、話を聞いてもらえそうだわ」

「はい、是非! 相談なら俺達が聞きます」

「落ち着いて中島。そんな緊張しなくていいから」

「フフッ、そうね。あなたも圭一も、私と同じ年頃みたいだし、仲良くしましょう」

「マヤちゃんがそう言うなら、友達になろう」


 調子がいい。

 というか中島、積極的。

 マヤの両手を掴んでいる。


「さあ、マヤちゃん、話して」

「え、ええ」

「中島~!」


 圭一は中島の腕を掴むと、マヤから中島の距離を離した。


「悪い。でもあんまりマヤの手を掴んでると、彼女が話しづらいと思って」

「う~」


 中島は口をしぼめる。

 が、すぐに理解した様に言った。


「分かったよ。確かに俺があんまり近づいたら、マヤちゃんも話しづらいからな」

「中島……」

「それじゃ、いいかしら」


 マヤは息を吸って呼吸を落ち着ける。

 やはり少し緊張していたのか。


「私達の星は、ここより遥か遠くにある惑星、イリアよ。その星は、ここ地球と良く似ている。けど、文明はずっと進んでいる。科学の力で、私達の星は飛躍的な成長を遂げたわ。科学者達は、新しい物体ものを次々と開発して行った。昨夜圭一に見せたのは、その一部よ」

「へえ」

「イリアは巨大な国家組織によってまとめられていたの。私達はみな、ロボットと生活を共にしていた。ロボット達は自立型A.I.を持っていたから、最初こそ人がプログラミングするけど、徐々に自分で知識を得て友達になっていったの。楽しかったな。一緒に家事をしたり、遊んだり、大人達と仕事をしたり」

「へ、へえ~」


 マヤは楽しそうに語る。

 圭一と中島は相づちを打つだけだった。

 ロボットと共存している世界。

 ちょっと未来の話だと思っていた。

 別の星では、もう実現していたんだな。


「マヤちゃん、ちょっと質問」

「何? 中島君」

「マヤちゃんの星では、車はあるの?」

「車? そうね。自動操縦になってるわ。乗った時に行き先を入力するだけで、後は車が判断して走ってくれる。空ルートもあるのよ」

「そ、それは、空飛ぶ車って事?」

「う~んそうねえ。山とか越えて近道したい時にね。ボタンを押すと、車に羽が生えて飛ぶ事が出来るのよ。急いでる人とか、よくこうやって他の車を越してるわね」

「す、凄いや。想像していた以上だ!」

「フフッ。他に何か質問はある?」

「じゃ、次は僕が」


 圭一が手を上げた。


「えっと、素朴な質問でごめん。君は僕の家での食事の時、箸を使って上手に食べていたけど、君の星にも箸が?」

「ええ、あるわ。地球と良く似た星だからかしら。昔からなので、私にもよく理由が分かっていないの。でもね、ここに来る前、少しは地球の事も勉強したのよ」

「ああ、だから地球の言葉で話せるんだ」

「ええ。だけどオレンジという果物は初めて知ったわ。あなたのお母さんが作ってくれるっていうクッキーも、どんな物だか想像出来ないけれど、これでまた勉強になるわ。ありがとう」

「どう致しまして」

「でも、案外イリアにも似た様な物があったりして」

「そうだよマヤちゃん。んで」

「……?」

「君がここに来た理由は?」


 その質問を中島がした途端、マヤは黙ってしまった。

 困った様な、どこか泣き出しそうな顔をして。

 何か聞いてはいけない事を質問してしまっただろうか。

 中島と圭一は戸惑う。


「マヤ……」

「マヤちゃん、あの、ごめ……」

「プッ」


 マヤが吹き出す。


「冗談よ。こっちこそごめん。私がこの星に来た理由? それはね、まだ秘密」

「ええ~」

「期待させちゃったかな。でも、もう少しこの星の人達と仲良くなってから。それまで暫く、この星に居るから」

「えっ、マヤちゃんまだ居てくれるの?」

「もちろんよ。だから暫くよろしくね。中島君、圭一」

「も、もちろんこちらこそ!」


 中島は腕を突きを上げて喜んだ。

 それにしても、


(何か、ちょっと不思議な子……)


 と、圭一はマヤの魅力に魅了されていた。











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