あれから三年後
銀河の向こう、愛は何処へ行くのか。
一体何処を通って、どんな星に愛を分け与えるのか。
たった一人の地球人の少年との出会いから奇跡の道のりが始まり、一つの星が救われた。
青い稲妻は宇宙の星達に導かれ、故郷へ帰った。
人々の笑顔が眩しい。
そして、緑が蘇った。
水が潤いを運び、風は季節を運び、時間は流れる。
その勇者の名は、ほとんど誰も知らないのかもしれない。
ただ一人の少女の胸には刻まれている。
少女は、花咲く丘の上に立って、その名を呼んだ。
「圭一、ありがとう」
眩しい笑顔が浮かび、涙までこぼれそうになる。
その呟きは、遥か彼方の星に向かって放たれた。
光輝く青い星。
地球という名の、その希望の星に向かって。
それから、三年の歳月が流れた。
十六才になった横野圭一は、中学卒業後、私立の高校に入学して、仲間達と楽しい学校生活を満喫していた。
その仲間達の中に、中学からの親友で同じクラスメートの中島高志がいた。
中学、高校と一緒で、しかも同じクラスメートで、これは運か偶然かと圭一は思っていたが、中島によればそれは縁という物だと教えてもらった。
そうか、そういう考え方もあるかもしれない。
縁――、人と人との繋がり。
ならば彼女との出会いもまた、〈縁〉だったのだろうか。
圭一の記憶の中の少女。
が、新しい生活に慣れるうち、圭一の心から彼女の記憶が一時的に抜けてしまっていた。
高校受験の勉強に専念する為、彼女の写真を机の引き出しの奥にしまったのが原因の一つだ。
両親も、彼女が居なくなってから、彼女の話題を話すのが寂しいからと、あまり口にしなくなってしまった。
そして無事高校に受かり、縁で中島とサッカー部に入り、女子生徒にも声をかけられるようになった。
その中の一人の女子にラブレターをもらい、とりあえず答えは保留して、自室の机の引き出しを開ける。
「あ……」
引き出しの一番奥に隠れていた、彼女の写真。
ノートに引っかかっていたのを引っ張り出す。
目があった。
おぼろげで曖昧だった、記憶の中の彼女の姿をはっきりと思い出す。
「マヤ……」
圭一はラブレターをくれた女子の告白を断る。
彼女は半分泣き顔だったけど、はっきりと断られた方が後腐れが無いと言って、最後には清々しく帰って行った。
圭一はその事を中島にも報告する。
ラブレターをもらった時、彼も近くの下駄箱に居て、圭一がどうするのか心配していたのだ。
「そうか。やっぱりな。お前はマヤちゃん一筋だと思っていたぜ」
「中島……」
「何年経とうがお前の心から、彼女は消えなかったんだよ。あ~。俺もお前からその話を聞くまで、忘れかけてたけどな」
「おいおい」
「とにかくさ、良かったじゃねえか思い出して。俺も彼女に会いてえ」
「そうだね」
「あ、いけね。部活の時間だ。行くぞ圭一」
「うん」
サッカー部の部室へ。
あの時と同じ様な、暑い夏の日。
地区大会優勝目指して練習が続けられる。
けれど圭一と中島は一年生で入ったばかり。
今はボール拾いとパスの練習からだが、いずれはレギュラー入り出来たらいいなと思っている。
夕焼け色の空が美しい。
飛行機雲が一本の線を描いた。
砂まみれのボールがゴール前に散らばる。
圭一達は片付けた。
「んじゃ、またな圭一」
「うん中島。また明日」
部活終わり、中島は寄る所があるというので、圭一とはここで別れた。
ははん、最近出来た噂のアイス屋に行くつもりだな。
今は桃のアイスが売り出し中らしい。
高校に入ってから、圭一と中島はようやく、両親からスマホを買ってもらった。
中島はネットで流行りの店とか、色々興味のある事を調べているようだ。
もしかして、知らないうちに彼女でも出来ていたりして。
まさか、ね。
圭一は一人、家路に急ぐ。
ユニフォームから制服に着替えていた。
蝉の鳴き声が聞こえる。
蒸し暑い。
ふと、立ち止まり空を見上げる。
「もう、三年か」
そっと呟いた。
愛しい娘は今、何をしているだろう。
青く輝く稲妻ロケットに乗って、惑星イリアからはるばる地球へと舞い降りた少女。
彼女の星は無事、救われただろうか。
文明の発展による戦争という悲劇にも負けずに、いつも純真に前向きに生きてた。
天使の様な笑顔と、キラキラ輝く瞳を持って。
「会いたいな」
今、もう一度。
大きくなって成長した彼女に。
圭一の思いは変わらない。
一時忘れていたけれど。
彼にとって、あんなに刺激的で情熱的な恋は無かった。
それでも、あの頃より大人になったおかげか、最近は少し余裕が出て来た。
今度彼女に会う時に、笑って受け止められる様に。
三年の歳月は、圭一の心をぐっと大人にしていた。
愛しい女性、マヤの心もぐっと大人になっているんだと思いたい。
今、再び二人が巡り会う瞬間。
運命の十六才の夏が、幕を開ける。




