表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青い稲妻  作者: 北村美琴
第1部地球編
34/152

宇宙へ帰る時

「……?」


 中島はその人物を確認した時、一瞬困惑した様な顔を見せた。

 まだ戻って来るには早すぎる。

 今日は久しぶりに二人での外出だという事で、ウキウキして出掛けて行ったはずだ。


「高志、無事だったか」

「父さん……」


 そう。

 その人物は中島のお父さん。

 今度は偽物でも何でもない。

 正真正銘の本物だ。

 息子である中島が認めているんだから。


「な、何で? 今日は昼過ぎまでデパートに行ってるはずじゃ……」

「ああ。母さんと二人楽しませてもらったよ。お前の土産をどれにしようかと思って探している最中に、妙な胸騒ぎに襲われてな。急ぎ帰って来たんだ」

「じゃあ、母さんも?」

「ええ、わたしもここに居るわ」


 親子の絆というべきか。

 息子の危機を察知し、慌てて戻って来る。

 長身の母親が顔を出した。

 子供達はミナの身体を隠す様に横並びをする。


「隠そうとしても無駄だよ。足の隙間から見えているし。まったく、事故とはいえそんな物が家にあっては、いい気分はしないな」

「……えっ?」

「圭一君、マヤちゃん。今日は高志の所に遊びに来た、という訳じゃなさそうだね。君達にも事情があるだろうが、まずはその女性の遺体を何とかしよう。……家内が、怖がるのでね」

「はっ、はい。ごめんなさい」


 マヤが荷物からペンライトを探し出す。

 以前ひまわり畑に圭一とデートをした時、待ち合わせした駅でその効力を披露したペンライトだ。

 光をミナの身体に当てる。

 ミナの身体は携帯電話の大きさくらいまで縮んだ。

 マヤはその縮んだミナを丁寧にハンカチに包んでバックへ。


「……!?」


 初めて見た中島はその力に驚いていたようだったが、何故か彼の両親はびっくりもしていなかった。

 それ以前に圭一とマヤにはある疑問がある。

 彼らがミナの事を事故と断言した事だ。

 何故、冷静でいられる。

 普通はパニックになったり、警察を呼んだりしないだろうか。

 自分の家に人が倒れていたら、なおさら。

 圭一と中島のように気持ち悪くなる気配も無い。

 それに、〈遺体〉とも言っている。

 これは何か知っていると考えるより他はない。

 マヤはゴクリと唾を飲んだ。

 状況によっては、今すぐここから出て行かないといけないかもしれない。

 バックの紐を握った。


「慌てる事は無いよマヤちゃん。ゆっくりと、話をしようか」


 中島の父親がマヤに近づいて来る。

 マヤの顔が青くなった。

 中島が間に入る。


「と、父さん。マヤちゃんを責めないで」

「別に責めていないわ高志。圭一君もよ。二人は、あなたを助けてくれたんでしょ?」

「あ、うん。え?」

「わたし達知ってるの。マヤちゃんが惑星イリアって星から来た宇宙人だって事」

「どええっ」


 中島は奇妙な声を上げて一歩後ろに下がった。

 どうして?

 両親には何も伝えてないはず。

 圭一とマヤを見てみたけど、二人とも首を振るだけで答える事は出来なかった。


「無理もない。高志は何も言わないし、わたし達もマヤちゃんはただの友達だと思っていた。だが疑問もあった。高志や圭一君と同じくらいの年だと言うのに、何故一人なのか。ご両親はどうなさったのか。その事について高志が喋ってくれないのも不思議だった。学校での出来事や圭一君の事は、だいたい話してくれるのにね」

「……」

「だから尋ねてみたんだよ。わたし達より事情を知っていそうな、あの方達にね」

「まさか……」


 中島の父親の視線がリビング外の廊下に向く。

 ドアは開いていた。

 誰かの足音が聞こえる。

 それも複数。

 圭一は、目を見開いた。


「父さん、母さん……」

「圭一、マヤちゃん。ここにも〈敵〉が現れたらしいね。無事で良かった」

「父さん達が話したの?」

「そうよ。圭一」


 両親は悪気もなさそうに頷く。


「どうして?」

「気持ちが分かるから。親は子供の事を心配するものだよ。中島君のご両親が、中島君が隠し事をしているんじゃないかと、気になさっていたから」

「でも……」

「マヤちゃん。君には悪いと思うよ。けど、わたし達の気持ちも分かって欲しい」


 マヤはうつむくだけ。

 中島が言った。


「そ、それで父さん。何故俺達が襲われていると分かったんだ?」

「ああ、それは……」


 中島の父親はリビングの天井を指さす。

 カメラがぶら下げてあった。


「お前の部屋とこの部屋の天井に、隠しカメラを取り付けさせてもらった。映像はわたしのスマホでも確認する事が出来る。泥棒対策にもなるし、お前の為だ」

「いつの間に。でも」

「確かに。お前にもプライベートがあると言いたいんだろう? が、そんな話を聞いた以上、親として子供を守るのは当然だ。最初は信じられない話だったがな」

「あ、あの……」


 マヤが口を開く。


「済みません。高志君と圭一を巻き込んでしまって。あの、私……」

「マヤちゃん」


 静かに、少し低い声で、中島の父親が注意した。


「絵のモデルになってもらったし、わたし達も高志の友人だと思ったから仲良くした。だが……」

「……」

「君には、高志から離れてもらう」

「……!!」


 覚悟していた事。

 ご両親が中島君を思う気持ちに偽りは無い。

 ならそう思うのも当然だろう。

 〈地球人〉の彼らにとってこっちは、得体の知れない〈宇宙人〉なのだから。

 敵を引き寄せた危険人物と思われても仕方ない。


 ポロッ。


 涙が流れる。

 宇宙そらへ帰る時が来たのかもしれない。


「マヤ……」


 圭一がマヤを慰めようとする。

 彼女は圭一を見て涙を拭い、わざと笑顔を作ると、


「皆さん。お世話になりました」


 ペコッと頭を下げて、急ぎ中島の家から走り去った。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ