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青い稲妻  作者: 北村美琴
第1部地球編
32/152

守れなかったもの

「ミナさん!」


 倒れたミナに駆け寄り、その身体を抱き起こすマヤ。

 ミナは彼女の目を見て微笑んだ。


「マヤ……」


 自分を見つめ涙を流すマヤの頬を、震える指で優しく拭う。

 最後の気力で呟いた。


「泣かないで、マヤ……。これは、罰なのかな……」

「罰って、何で、こんな……!」

「あのロボット……。あの人の物じゃなかったの?」


 ミナの腕のリングが光る。

 通信だ。

 〈敵〉の幹部達が映っていた。


「あの男なら、殺したぞ。裏切りが発覚したからな」

「……そん、な」

「残念だったなミナ。まあ今ならあの男の下へ行けるだろう。ロボットは、こちらから操作させてもらった。こうなる事を予期してな」

「わたし……は、泳がされて、いたの……、ね」

「そういう事だ」


 マヤが怒りを滲ませ睨んだ。


「ミナさんを、利用するなんて!」


 圭一や中島には今まで見せた事のない表情だ。

 こんな激しい一面もあるとは。

 仲間の事を本当に大切に思っているからこその感情なのだろう。

 しかし敵の幹部はそんな事関係無い、と言いたそうな顔で淡々と言う。


「レジスタンスの娘か。ミナの力をわしらの戦力にしようと連れて来たが、最後までお前達から離れるつもりは無かったようだな」

「あなた達は……!」

「あの男と付き合っている気配さえ、巧みに隠しておった。だが、そうそう隠し通せると思うな。男が寝ている間に、カメラを取り付けさせてもらったぞ」

「そんな……」

「本来ならミナの様子を近くで観察する為だったが、そのカメラにもっと面白い物が映っていたのでな。それを利用させてもらったまで。さすがは監視カメラとは違う、身体に埋め込んだ小型カメラよ」

「……くっ」


 ミナが唇を噛んだ。

 悔しいだろう。

 愛する人の死を知らされ、ロボットに撃たれ、敵に反撃も出来ないなんて。

 嘲笑うかの様に、さらに話し声は続く。

 切ってしまいたい。

 しかし向こうから繋げて来た通信を、消す事など不可能な様だ。


「その身体じゃ耳を塞ぐ事も出来んぞ、ミナ。マヤと言ったか。お前達も聞け。ミナの愛した男だがな、人間としての命を奪っただけだ。実際は、ほら、そこに居る」

「え?」


 まさか。

 マヤ達はロボットを見た。

 林の中で戦ったのと同じ、ガイコツ型のロボット。

 そんな、そんな事が……。


「散々痛めつけた後、新しい命に改造してやったのだ。どうだ。愛した男に殺される気分は?」

「じゃ、じゃあまさか……。今までのロボットって全部……?」

「察しがいいなマヤ。そうだ。あれはほぼ、戦争で散った者達よ。わしらが科学の力を理由して、新たな身体を与えてやったのだ。どうだ? あれこそわしらが造った、傑作品だ!」

「……っ」


 何という衝撃。

 胸くそが悪い。

 聞いていた圭一と中島も、怒りを覚えるほどだった。

 命を、何だと思っているんだ。

 これが〈敵〉。

 マヤの言っていたレジスタンスの、〈敵〉。

 彼女が愛を求めて地球に降りて来た理由が分かった。

 こんな人達が居るから、戦争が広がったんだ。

 科学の本質を履き違えている。

 科学って本来は、みんなの役に立つはずの技術のはずなのに。

 戦争の道具に使うなんて。

 ミナはもう何も言う事が出来ない。

 悲しい目で、ロボットを見つめているだけ。

 このロボットが、あの……。

 優しい、あの人なの?

 涙で目が霞んで来た。

 撃たれた傷が痛い。

 それ以上に心が。

 ミナは自分を抱くマヤの腕をギュッと掴んだ。

 マヤがミナを見る。


「ミナさん?」

「マヤ。あの人を……、あの人を解放してあげて。お願……、い。わたしはもう、あなた達に頼る事しか……、出来……、ない」

「ミナさん? ミナさん!」

「ごめん……、ね」


 ミナの時が、止まった。

 力無く落ちた腕が床を叩く。

 マヤの涙が、ミナの閉じた瞼の上を流れた。














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