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青い稲妻  作者: 北村美琴
第1部地球編
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30/200

敵か味方か

 中島の父親がマヤの秘密を知っていると喋り出した時、コーヒーのカップを持とうとした圭一の指もそこで止まった。

 この人には言っていないはずなのに。

 息子である中島も、両親には知らせていないと話していた。

 一体何処から情報が漏れたんだろう。

 マヤが醸し出す雰囲気で、なんとなく分かってしまったか。

 圭一が最初に感じた様に、不思議な少女だなあって。


「マヤ……」


 隣のマヤを見る。

 圭一以上に緊張しているのは彼女だろう。

 さっきから何も話していない。

 口が半開きになっている。

 ただ目だけはしっかりと中島の父親を見ていた。

 その父親が喋る。


「答えられないのかい? 大事な事だよ。何故君が戦争を止めたいと願っているのか」

「それは……」

「仲間達との約束だから? それとも両親の願いだったから?」

「……っ」


 どうして、そこまで知っているんだ。

 思わず圭一が口を出す。


「おじさん。中島……。高志から聞いたんですか?」

「いや。高志は何も言っていない。なんとなく、ね」

「なんとなくで分かる事?」


 マヤの顔つきが変わった。

 怒っている様な、疑っている様な。


「おじさま、じゃないわね。私も圭一も中島君も話していないもの。二人とも約束してくれた。私に危害を加える地球人がいるかもしれないから、秘密にしておこうって」

「秘密? わたしは家族だぞ」

「もし中島君があなたに私の事を話しているんだったら、私が戦争を止めたい理由も分かるはず。一緒にロボットを蹴散らしてくれたんだから」

「……く」

「おじさまだったら、私に何もしないだろうけれど、中島君は多分、ご家族を守りたいのよ。あの一件があったから。圭一のご両親については、仕方なかったのよ。ロボットが攻めて来る前だったし、地球に着いたばかりで、頼れる人が少なかったから」

「……そう」


 それは聞き覚えのある中島の父親の声じゃなかった。

 圭一がギョッとした顔をする。

 どうなっているんだ。


「外に出よう。わたしもあまり騒がれたくない」


 その声のまま、中島の父親の姿をした者は立ち上がる。

 レジで三人分の代金を払った。

 建物の外へ。

 通り過ぎる人はいるが、誰も圭一達の事を見ていない。


「丁度いいな。ここなら」


 まるで何かの映画を見ている様に、中島の父親の顔が変化していく。

 グニャッと潰れたと思ったら、二十代くらいの女性の顔が現れた。

 髪は長い銀髪。

 脇の髪をかけて、両耳を出している。


「ひ……っ」


 悲鳴を上げそうになった圭一の口をマヤの手が押さえる。


「落ち着いて圭一。駐輪場へ」


 小さい声で囁き、彼の手を取って走った。

 中島の父親に化けていた女性は、


 パッ。


 彼女達を追いかける様に、一瞬でその場から消えた。

 駐輪場の圭一達。

 訳が分からないまま、圭一はマヤに聞いた。


「どうなってるのマヤ。中島のおじさんが女の人に……。僕は、何を見たの?」

「彼女は私達の星の、敵側の人間。写真や映像で見た人物の姿に変身する事が出来るの。私が関わった地球人の事を、調べていたんだわ」

「関わったって……」

「ええ。急いで中島君の家に行きましょう。捕まってるかもしれない」

「行かせはしないわよ」


 いきなり目の前に、あの女性が立ち塞がった。

 息を切らせている様子もない。

 瞬間移動でもして来たかの様だ。


「……やっぱり、追いついて来たのね」

「ええ。わたしの能力を知ってるでしょ? マヤ」

「……」


 マヤは黙る。

 圭一はどうしていいのか分からず、マヤと女性の顔を交互に眺めた。


「いいのマヤ? 彼氏が戸惑っているわよ」

「そうね。圭一にはきちんと説明するつもり」

「そうしなさい。自転車で逃げている暇は無いわよ」


 女性が一歩近づく。

 マヤはホットパンツのお尻のポケットから光る小石を探った。

 ロボット戦で使うはずだった小型の閃光弾。

 それを女性の足元に放つ。


 パン。


 圭一達以外、誰も居なかったのが幸いした。

 女性は目をくらます。

 その隙に圭一とマヤは自転車に乗って逃げた。

 目指すは中島の家。

 走りながらマヤが圭一に説明する。


「彼女はもともと、私達の仲間として戦ってくれていた。変身能力と、瞬間移動の能力を使ってね。でもある日、敵に捕まってしまって、そのまま……」

「君の言う、敵の仲間になったって事?」

「……多分。私達も、早く彼女を助け出せなかった。それが悪かったのかも」

「マヤ……」

「とりあえず今は、中島君の家に急ぎましょう。彼女がいつからおじさまに化けていたのか分からないけれど、彼の家に行けば何かが掴めるはず」

「分かった」


 自転車はスピードを上げる。

 目をくらませたとはいえ、女性が瞬間移動の能力を持っている限り、自分達より早く中島の家に着いている可能性もある。

 あるけど。

 到着してみないと分からない。

 玄関前に二台の自転車を止めた。

 ピンポンを鳴らす。

 反応は無い。

 玄関扉に耳を近づけ物音が聞こえるか確かめてみても、人の声すらしない。

 留守なのか。

 圭一がもう一度呼んだ。


「中島、おい、中島!」


 やっぱりシーンとしたまま。


「居ない、の?」


 マヤがドアノブに手をかけた。


 カチャッ。


 鍵が開いてる。

 これはおかしい。

 意を決してドアを開けると、中島の靴がちゃんと揃えて置かれていた。

 他の家族の靴も。

 家の中に居る。


「失礼しま~す」


 圭一とマヤは頷き合い、家の中に上がらせてもらう。

 居間の扉を開けた時、そこにはロープで体を縛られ、口に猿ぐつわをされた中島と父親の姿があった。

 そして、


「遅かったわね」


 中島の首元にナイフをちらつかせ、マヤ達を見て笑う女性が待っていた。












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