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青い稲妻  作者: 北村美琴
第1部地球編
27/153

熱を出した圭一

「マヤちゃん、おはよう。いらっしゃい。昨日は、良く眠れた?」


 いつも圭一と何処かに出かける時は、圭一がマヤを迎えに行くパターンが多いのだが、今日はマヤが彼の家に迎えに来ていた。


「はいおばさま。昨日はありがとうございました。おかげで、いい気分でスッキリ眠る事が出来ました」

「フフッ。いっぱい泳いだものね」

「もともと、体を動かすのが好きなので」

「そう? わたしは張り切り過ぎて筋肉痛だわ~。駄目ねえ」

「気を付けて下さいね。ところで、圭一は?」


 彼の母親と話をしている間にも、二階から圭一が下りて来る気配は無い。


「おかしいわね。父さんは早めに仕事に行ったけど、あの子が寝坊なんて……。マヤちゃん、家の中に上がる? わたし、様子を見て来るわ」

「はい」


 玄関からリビングへ上がらせてもらう。

 リンゴジュースが出てきた。


「ごめんね。ちょっと待ってて。圭一の部屋に行って来るわ」

「はい。ありがとうございます」

「圭一~。マヤちゃん来てるわよ。圭一~」


 言いながらタッタッタッと階段を上がって行く。

 マヤはジュースを手に取った。


 ゴクッ。


 リンゴの爽やかな風味が喉の奥に広がった。

 確か、地球で最初に飲んだジュースはオレンジジュースだったな。

 圭一が用意してくれたんだっけ。

 果汁を絞って飲む、という体験は、マヤが十三年間生きて来た中でもあまり無い経験だった。

 惑星イリアでも果物は栽培されている。

 果汁も実は機械を使って絞られている。

 だがほとんどは気軽に取れるサプリとして加工されている為、ジュースとして飲む機会はめったに無かった。

 しかも口の中に入れればすぐ溶けるので、水と一緒に飲む必要が無い。

 戦争が始まったらその方が便利だと言うので、戦士達の間で需要が高まった。

 日々の食事もそう。

 争いが激しくなるにつれ、畑で野菜を作る事もままならなくなり、皆はサプリに頼る様になった。

 栄養補給の為には、それしか方法がない。

 一応店の保管庫に入れるという形で、ジュースが売られてはいるのだが、今やサプリより高価となり貴重な物なので、マヤの中ではそれがジュースという名前だったかどうかが、曖昧になっていた。


 コンコン。


 二階でドアをノックする音がする。


「圭一、どうしたの?」


 ドアを開けた。

 圭一はベッドの中で薄いタオルケットを頭まで被り、横になっている。

 母親は息子を揺さぶる。


「圭一、圭一」

「う~ん」

「もう、仕方ないわね」


 タオルケットを腰くらいまで剥がしてみる。

 圭一は母親と反対側を向いていた。

 無理やりこっちに向かせる。


「あなた、熱あるの?」


 顔が赤くなっているのに気付く。


「……ない、よ」


 母親の声に圭一は目を開けた。


「何言ってるの。昨日はしゃぎ過ぎちゃったのかな? ちょっと待ってなさい」


 おでこを触って熱があるのを確認すると、下に下りて行く。

 やがて体温計とすりおろしたリンゴを持って再び部屋にやって来た。


「体温測って、これを食べなさい。もうすぐマヤちゃんも来るから」

「……え? マヤ、は……」

「圭一、大丈夫?」


 マヤがドアの隙間から覗く。

 圭一の母親が笑って促した。

 ベッドの側に来る。


「熱が出たって聞いて、私、心配で……」

「大丈夫、だよ。これくらい。コホッ」

「ほら、咳をしてるじゃない」


 母親が体温計を確かめた。


「37度5分ね。少し高いわ。風邪引いちゃったのね」

「圭一、これ食べる? 熱やだるさに効果があるって言われる、惑星イリアの木の実よ」


 黄色いピーナッツみたいな物。


「何か仲間達に、いろいろ薬持たされちゃった。地球で何があるか分からないから」

「ありがとうマヤちゃん。圭一。ありがたく使わせてもらう?」

「あ、うん」


 圭一は木の実を手にした。


「じゃ、じゃあ」


 カリッ。


 カリカリしてて、ナッツを食べている様な感覚。

 ヤバッ。

 喉の変な箇所に欠片が。

 一瞬むせる。

 母親がすりおろしたリンゴと一緒に持って来たお茶を飲ませてくれた。


「落ち着いて食べなさい。マヤちゃんの前だからって、慌てるんじゃないの」

「べ、別に慌ててはいないよ」

「そう。熱はどう?」


 あ……。

 頭が熱くボーッとしてたのが、治まってきた気がする。


「でも圭一。念のためもう少し休んだ方がいいわよ。図書館に行くの、私待ってるから」

「え? でも……」

「いいから。圭一に無理させてまで私、調べ物したくないから」

「マヤ……」


 圭一は、せっかくだからと母親がすりおろしてくれたリンゴをを頂き、ベッドに体を預けた。


「じゃあ、君がそう言ってくれるのなら、僕もう少し寝るよ」

「ええ。私も側に居るからね」


 圭一はマヤの好意に甘え、そっと目を閉じた。













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