テトラポッドで
バシャバシャ。
競争、となったら負けてはいられない。
誰が一番早いのか。
泳ぎ方は何でもいいけど、多分クロールが一番スピードが出る。
惑星イリアで泳ぎを習っていたのか分からないが、マヤの泳ぎは姿勢がいい。
足も真っ直ぐ伸びている。
地球に良く似ている星という事だから、海もあったのだろう。
圭一も幼い頃、スイミングスクールに通っていた。
クロールは得意だ。
が、
ザバッ。
時々襲う波に邪魔され、三人の体が押される。
結局一番早くテトラポッドに到着したのは、中島だった。
「ヤッホー。一番乗り!」
水からテトラポッドに上り、中島は叫ぶ。
「ヤッホーって……。中島、山じゃないんだからさ」
「中島君早いね。私は、圭一と同時だね」
圭一とマヤも来た。
中島がマヤの手を引き、テトラポッドの上に誘導する。
「圭一と同時なんて、マヤちゃん。相変わらず二人仲いいんだね」
「ありがとう中島君。そうなの。圭一が途中で、待っててくれたらしくって」
「へえ」
圭一も上る。
中島がからかう様に言った。
「やるじゃん圭一。彼女、待っててあげるなんて」
「ベ、別に……。マヤが波に呑まれて遅れてたから」
「それで一緒に手をつないでた訳か。カッコいいよな」
「え?」
「いい奴だって事だよ。さて、優勝賞品って何かな」
「悪いね。優勝賞品は用意してないんだ」
「お、おじさん」
圭一の父親と母親が到着する。
テトラポッドの上で両手を頭の上に伸ばし、まるで背伸びをする様な表情で遠くを見ていた中島は、ギョッとして圭一の父親を眺めた。
「お、おじさん。別に本気で言った訳では。ただ、話の流れで……」
「優勝おめでとう中島君。慌てなくても分かってるよ。僕も話の流れで言っただけなんだ」
「あ。そう、ですよね」
「フッ。面白い子だね。それにしても君達を追いかけるのに疲れてしまったよ。僕達も休ませてもらおうかな。ねえ、母さん」
「ええ」
大人二人、子供三人でテトラポッドの上に腰掛ける。
夏の日差しでキラキラした海。
潮風が気持ちいい。
なんだか喉が渇いて来た。
「よ~し、それじゃそろそろ砂浜に戻りましょうか。泳いだら喉渇いたでしょ?」
「そうだね、母さん」
「それにマヤちゃんの肌をあんまり焼けさせるのもよくないからね」
再び海の中へ。
マヤみたいに肌の白い子は、日焼けをすると赤くなってしまう。
下手をするとヒリヒリして痛いんだよね。
まあ、泳ぐ前に日焼け止めを塗ったはずだから、大丈夫だとは思うが。
「んじゃ、圭一、マヤちゃん、行こうか」
また中島が最初に泳いで行こうとする。
「待って中島君。また競争なの? 今度は、ゆっくり行きましょうよ」
「そうだよ中島。急いで行く事ないよ」
圭一とマヤが中島に並んで泳ぐ。
仕方ないな、と中島はペースを落とした。
圭一の両親は子供達の後ろをぴったりとついて来る。
岸に近づいて来た。
中島が砂の上に足をつけた。
「あち」
砂が焼けてる。
日差しの勢いが強くなってきたんだ。
早くマットの上のビーチサンダルを履かないと。
つま先で歩いてマットの所へ。
マヤが圭一に導かれパラソルの下に座る。
「あら、涼しい」
圭一がジュースを袋から取り出した。
熱くならない様に一応、パラソルの下に置いておいて良かった。
保冷剤も入れておいたし。
両親含めみんなでジュースを飲む。
と、ちょっと早いけど、そろそろお腹が鳴る頃だ。
周りの人達の中にも、食べてる人達がいる。
「おばさま」
「ええマヤちゃん。わたし達もお昼にしましょうか。はい、中島君もどうぞ」
「ありがとうございます。うわ、すげえ」
「マヤちゃんも手伝ってくれたのよ」
「そ、それじゃ遠慮なく。頂きます」
用意したおしぼりで手を拭いた後、割りばしを割る。
二重になっている重箱。
上の段には、梅干し、鮭、おかかのおにぎりがいくつも。
下の段にはおかずがいっぱい。
卵焼き、唐揚げ、きんぴらごぼう、お漬け物、レタスのサラダ、ポテトフライ、さらに果物まで。
どれも美味しそう。
「さあ、好きな物を食べてね」
「圭一、これ、私が作ったの。どうかな?」
マヤが作ったという、梅干しのおにぎり。
圭一は一口食べる。
「コホッ。ちょ、ちょっとしょっぱい」
「えっ? ご、ごめんなさい。塩かけ過ぎちゃったかな」
「だ、だいじょう、ぶ」
むせて水を飲んだ圭一だが、彼女の事は怒らない。
「だ、誰だって失敗する事あるから」
「で、でも……」
「初めて作ったんでしょ? ちょっと形があれだったし。大丈夫だよ」
「あ、うん。ありがとう」
「そうマヤちゃん。圭一なら平気だって。じゃあ、俺はこれも~らお」
中島が卵焼きを手にした。
「う、旨いこれ」
「でしょ? 佐登子さん特製、ほうれん草入り卵焼きよ」
「お~。さすがおばさん!」
フッ。
中島らしいな。
明るい声を聞いて、落ち込んだマヤも笑顔になった。
わざと元気な声を出して、励まそうとしてるのかな。
まさか、ね。
圭一とマヤは顔を見合せて笑った。




