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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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バリーとDEX

「ココカ」


 真ん中のドーム地下、研究室ラボの扉の前。

 二体のロボットに挟まれる形のフィールズ博士が、引きずられるみたいに立たされる。


「サア、フィールズ、開ケロ」


 左右のロボットが離れる。

 だが背中には銃が突き付けられていた。


「……」

「ドウシタ? モシヤ支部ニ人質ガ居ル事ヲ、忘レタ訳デハアルマイナ?」


 立ったまま扉を開けようとしない博士に向かって、DEX が催促するように語る。


「オ前ニ拒否権ハ無イ。私ニ従ウマデダ。ナラ、コノ本部アジトノウチノ誰カニ犠牲ニナッテモラウカ……」 


 DEX が女性型ロボットに命令しようとした瞬間、ガチャンとロックが開いた。


「……」

「フッ、マアイイ。中ニ入ルゾ」


 フィールズ博士が扉のロックを解除したのだと察したDEX は、ニヤリと笑うと彼を触手で掴み、研究室ラボの中に入った。


「ホウ。コノ感ジ、懐カシイ気ガスルナ」


 DEX の意識の中に在るのは、エドモンド・ディムジーという男の記憶。

 その意識が宮殿の研究室ラボの記憶を呼び起こしたのだろう。

 博士は黙ったまま先に進んで行く。


「は、博士……」


 バリーとジンが追い付いた。

 けど中へは入らず、入り口の扉に隠れるようにして様子を伺っている。

 今焦って博士を助けに向かえば、DEX やロボット達に見つかっしまうのはもちろん、彼ら敵の武器により、大切な研究室ラボの内装、及び機械類を傷つけられてしまう可能性がある。

 食堂がそうだったように。

 いや、あれはある意味自分達のせいでもあるのだが。

 それに博士が何かしら作戦を考えているとしたら……。

 それを邪魔したくない。

 ジンのその考えに、バリーも従っていた。

 突入するとしても、静かに行動する必要がありそうだ。

 博士の視線は真っ直ぐ奥を見つめてる。

 DEX は机の上の焼け焦げて部品が飛び出たコンピューターを眺めた。

 他にもあと二つある。

 コンピューターだけでなく机や天井、周辺の床なんかも黒くなっていた。

 これが仕掛けた罠の跡か。

 これの仕業でロボット達が負傷した。


「フィールズ……」

「悪く思うな。ここに攻めて来たのは、お前達の方だ」


 DEX が何を言おうとしているか、博士は理解していた。

 振り向きもせず淡々と答える。

 DEX も怒っているのかいないのか、表情がはっきりしない。


「爆発、シタトイウノニ、丈夫ナ、机ダナ」

「そう思うか?」

「フッ」


 触手で軽く触ると、机の前方の脚が壊れ、ガタンと斜めに崩れた。

 機械も滑り落ちる。


「コレデ、ロボット達ガ……」

「そうだ」

「ソノ壁カ? 大切ナ物ガ隠シテアルノハ」

「……あまり、悲しんでいるようには思えんな」


 フィールズ博士が、壁に手を触れようとした時、


「バリー」

「うん」


 ジンが小声で目配せする。

 DEX とロボット達が博士の動きに注目している間、扉の影からサッと中に忍び込み、棚の隙間に身を隠した。

 DEX 達には……。

 バレてない。

 そっと顔だけ出して博士を見た。

 壁に手をつけている。

 が、その場所は……、


「フィールズ、場所ガ違ウンジャナイカ?」


 DEX が指摘する。

 訳が分からないロボット達は少し戸惑っていた。

 ジンとバリーもお互い顔を見合せる。


「指紋センサーデ見タ。オ前ノ指紋ハ、別ノ場所ニタクサン付着シテイルゾ。ワザト違ウ場所ヲ押シタナ。時間稼ギハ意味ガナイ。私ノ前デハ」


 そういう事か。

 DEX の前では、誤魔化しも通用しない。

 博士は触る位置を変えた。


 ゴッ。


 隠し部屋が出現。

 メインコンピューターが、奥の壁際の台の上にある。

 興奮したロボットの一台が近づこうとした。


「……! ヤメロ!」


 DEX が制止したが間に合わなかったか、隠し部屋入り口の見えないセンサーに、ロボットは触れてしまう。


 ビッ。


 電撃が走り、ロボットの身体は壊れた。


「フィールズ、オ前……。ムッ」


 隠し部屋の入り口だけじゃない。

 今度は目に見える光線の無数の線。

 DEX とロボット達の回りを中心に張り巡らされている。

 これでは動く事も容易ではない。

 博士がズボンのポケットから何かを取り出した。

 小型の装置。


「ソウカ、ソノ装置デセンサーヲ……」


 DEX 達を貶める為に博士が様子した罠。

 というより、ロボット達が本部アジトに突入して白兵戦になった場合に備えて、あらかじめ準備していたもの。

 それを利用しただけの事。


「サスガダ。次々事態ヲ予測シテ行動ヲ考エル」

「それが仕事なんでな」


 ならば、とDEX は笑う。

 彼の中のエドモンドの思考も、同じように反撃する手順でも思いついたのか。


「バリー、オ前ニコノ罠ヲ解イテモラオウ」

「え……」


 部屋に入った事がバレていた?

 DEX は続ける。


「驚ク事デモ無イ。気配ガ、シタノデナ」

「……く」


 バリーとジンは棚の影から姿を現す。


「ソウダ。サア、バリー」


 DEX はセンサーに触れないように触手を伸ばした。





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