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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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女傑ミカーラ

「女傑……?」


 ジンとバリーは驚いたようにその場でポカンと、立ち止まってしまっている。

 ただの食堂のおばちゃんだと思っていた。

 城でフィールズ博士と知り合いだった、なんて事も聞いてはいない。

 そもそも本部アジトに来た経緯は?

 確か自分で訪ねて来たとか。

 メドゥーとマグがメンバーになる一年ほど前。

 それは聞いてる。

 それでスタッフが足りなかった調理場のメンバーに入る事になったらしい。

 もともと料理は得意だった、と本人が語っていた。

 でも――、

 知り合いの博士が本部アジトに居たからここに来た、ってのは分かるとして、それ以前、城で何をやっていたか、って事が謎だ。

 同じように調理場で働いていたのかな。

 けど、女傑って……。

 頭の中が疑問符だらけだ。

 博士も、少しくらい教えて下さってもいいのに。


「ちょっとあんた達! 何ボーッとしてるんだい」


 ジンとバリーの耳に、怒声が飛んだ。


「お、おばちゃん……」

「おばちゃんじゃないよ。まったく。まだ戦闘は続いてるんだ。考え事してちゃ駄目だろう」

「ゴ、ゴメンだべ」

「……たく。まあいいさ。あたしの姿を見て、目を覚ましなよ」


 ミカーラはロボットに向かって突撃して行く。


「やっ!」


 早い。

 ボディに向かっての突きが避けられたと思ったら、すかさず回し蹴りを食らわす。

 ロボットの顔面に命中。

 床に転ばせる事に成功した。

 その一連の流れるような動作に、ジン達は感動すら覚える。


「……凄いべ! おばちゃん」

「凄い……、けど、ここまでの強さを、どうやって……」

「女性兵士だったからだ。ミカーラは」


 博士が近づく。

 ロボット達は博士達よりミカーラの方を相手した方が効率的でいいのではと判断して、彼女の回りにぞろぞろ集まって来る。

 床に倒されたロボットは勢いをつけて起き上がり、反撃したものの逆に止めを刺されていた。

 ミカーラの手にはペティナイフ。

 軽くて、急所の〈核〉が狙いやすい。

 彼女に消滅させられたロボットの仲間の仇討ち。

 ビームだ。


 ビュッ。


 危ない。

 顔を少し傾げるだけで避け、素早く動く。

 懐に入った。

 その動き、ロボットには捉えられなかったか。

 仇討ちのつもりが、反対にあっという間にやられてしまった。


「お、おば……ちゃん」

「凄い、べ。これが、あの人の……」

「そう。実力だ。女傑のミカーラ。城では、男達に混じって奮闘していた、女性兵士だった。さっきも言ったが……」

「兵士……」


 初めて聞く話……。

 料理上手で、世話好きで元気なだけじゃなかったんだ。

 そういえば、何処かたくましさみたいな物も、彼女の言動の端々からたまに感じられる。 


『ソノオ話、私達二モオ聞カセ願エマセンカ?』


 リングを通じてクローンとメドゥーが会話に入って来る。


『博士、私達もです』


 マヤ、圭一、中島もだ。


「き、君達、一体……」

『位置情報デ、博士達ガ食堂二イラッシャル事ヲ知リマシタ。ソシテロボット達ト遭遇シタ事ヲ確認シタノデス。カメラデ、見サセテ頂キマシタ』

『……俺達の所にはまだ、敵が侵入した形跡がありません。ただ、じっと待っているだけでは、落ち着かなくて……』

「そうか。仕方ないメド、君は、武鬪派だからな」

『……はは。マグにも言われました』

「そうか」

「あら、あたしって結構な人気なんだね。嬉しいけどさ、話ならこいつらを片付けてからにしてもらえないかねえ。いくらあたしでも、全部の相手は出来ないよ」


 ミカーラがロボットに蹴りを入れながら言う。


「む、そうだな。今手伝うぞミカーラ」

「頼むよフィールズ」


 博士の事を名前で呼んでいるという事は、城に居た時点から博士と仲が良かったと思える。


「は~っ!」


 華麗なミカーラのナイフ裁き。

 博士が仕留められなかったロボットを二体も倒している。


「どうしたんだいフィールズ。腕、落ちたんじゃないの?」

「いや。腕というよりわたしはもともと科学者だからな」

「でも、王子様付きの科学者だったんじゃないか」

「君も、亡き王妃様をお守りする近衛兵に選ばれただろう。名誉ある事だ」

「……偶然だよ」

「そう、か……」


 一瞬ミカーラは悲しげな表情を見せた。

 亡くなられた王妃様の事に起因しているのか。

 その事については、あまり深入りしない方が良さそうだ。


「ジ、ジン。僕達も手伝った方が、いい……のかな?」

「だべな。っ、バリー!」


 彼らが構えるより先に、ロボットのビームが照射された。

 ジンはバリーを庇い、飛び込んで伏せる。


 ビッ。


 背中をかすめた。

 服に穴が開く。


「ジ、ジン! 大丈夫!?」


 ジンの腹の下になっているバリーが聞く。


「だ、大丈夫……だ、べ。バリーは、怪我が無いべな?」

「う、うん」

「ジン!」


 ミカーラと博士が飛んで来る。


「ちょっと大丈夫なのあんた……!? 血……は出てないみたい」

「お、おばちゃん。おいらは平気だ、べ」

「でも、君は少し休んでいた方がいい。バリーは、やれるな?」

「……はい、博士」


 エネルギー砲を担ぐ。

 再びビームを放とうとしたロボットを爆散させた。


「やるじゃないバリー。ま、ちょっと派手だったけどね」

「ゴ、ゴメンおばちゃん。つい……」

「恨みって、怖いね。あれ……?」


 残ったロボットは恐怖を感じたのか、その場から逃げ出す。


「逃げちゃったよあいつら。それだけあたしが嫌だったのかねえ」

「そうかもしれないな」


 博士がポツリ、と返した。








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