白兵戦開始その2
「……ふ」
ジンは肩にエネルギー砲を担ぎ、エレベーターから降りると、呆然とするロボット達を見て笑みをこぼした。
女性と男性の仲間も降りて来る。
女性はバリー、マグ、クローンが隠れ簑にしていた小屋が燃やされた時に、救出をメドゥー達に任せ、囮になりDEX に立ち向かい活躍した女性だ。
男性の方もその場に居たようだがあまり目立たず、後ろの方でサポートしてた印象がある。
女性は二十代後半、男性は三十代くらいか。
〈壁〉のハッキングに集中している仲間を守るように、ロボット達が構える。
ジンがエネルギー砲を発射した。
ズバン。
固まって守っていたので、ハッキング中のロボットには影響が無く、前列のロボット達がバラバラと倒れただけだった。
「……ッ!」
仇、とばかりに二体がジンに飛び掛かる。
ジンはエネルギー砲を下ろしナイフを握る。
だが群れの中からもう一体が抜け出た。
バッ。
ジンに攻撃が当たる前に、男性の光線銃が火を吹く。
一体の肩をかすめた。
もう二体は?
あ、ジンが狙いだと思ったら、後から抜けた一体が女性の方へ方向転換した。
ナイフを持っている女性の手首を掴む。
最初のロボットはジンのナイフを避け、彼の腹を殴った。
「ぐはっ」
もう一発。
ジンはエレベーターの扉に体をぶつけ倒れる。
「ジン!」
男性と女性、同時に叫んだ。
「く……。やって、くれるべ……」
起き上がろうとするジンだが、お腹が痛くて力が入らない。
落としたエネルギー砲をロボットが拾う。
「まずい!」
男性が咄嗟に動いた。
エネルギー砲を担ごうとするロボットの隙を見て懐に入り込む。
撃たれてたまるか。
エネルギー砲に集中していたロボットは、彼の動きに気付いていなかった。
自分達も、撃ってみたいと思っていたか。
あっさりと胸の核をナイフで刺される。
「サンキュー……、だべ」
消滅するロボットを見ながらジンが上半身を起こす。
男性が支えた。
手首を掴まれている女性は、離しなさいとロボットのボディをキックしていた。
おお、強い。
が、握る力の方が上なのか、ロボットは彼女を離す事はしない。
その時、ハッキングが終わったと声が上がる。
それと同時刻に、地下から博士達に追われ逃げていたロボット達が合流する。
「し、しまった、べ」
右のドームへの〈壁〉が開いた。
ハッキングが成功したロボットを含め、敵はニヤッと笑うと、合流したロボット達を先に動く歩道の方に行かせた。
「……っ」
女性を捕縛しているロボットは、仲間が行くまでその場で女性を捕らえながら待っている。
大広間の扉がガラッと開いた。
「ジン! 居た……か?」
フィールズ博士とバリーだ。
二人とも、逃げたロボットの集団を追いかけて来た。
手首を掴まれている女性、エレベーター扉に体を預けて、男性に支えられているジン。
部屋の中がどういう状態か確認する。
急な博士達の登場に、女性を捕らえているロボットや、まだ右のドームに行っていないロボット達は、驚きギョッとした。
「は……、博士……」
「うむ。大丈夫か? 今……」
女性の元に走りたい博士だったが、散らばっていたロボット達が邪魔をする。
「むっ」
フィールズ博士が行けないとなると……。
バリーが光線銃を構える。
良く狙って。
ビッ。
女性を掴んでいるロボットの手首。
そこを狙った。
ナイス。
ロボットは苦い顔をして女性を離す。
「今だ、べ」
大丈夫、と男性にサインを送り、立ち上がったジンがエネルギー砲を放つ。
女性が逃げると同時に、ロボットはやられた。
残っていたロボット達にざわめきが起きる。
が、彼らもDEX に選ばれこの基地に攻めて来た精鋭。
こんな事くらいでは止まりはしないだろう。
ビッ。
一体がいきなり天井に向けてビームを撃った。
「な、何をする!」
天井は穴が開いただけで何かが落ちて来るとかは無かった。
戸惑いと、ちょっと安心の博士達を尻目に、ロボット達はエレベーターに向かい殺到する。
ジン達が中に隠れていた。
という事は、ボタンを止められていただけで、動く可能性は残されている。
ビンゴ。
大勢の移動に焦ったジンと男性を突き飛ばし、ロボット達はエレベーターに乗る。
そのまま上の階へ。
「なっ」
「バリー、ジンと非常階段から上へ急ごう。君達は右のドームへ」
「しょ、承知しました!」
博士とバリーに助けられ、ジンと男性はゆっくり立つ。
一旦外に出て、非常階段でフィールズ博士とバリーとジンは上の階へ。
男性と女性は動く歩道を通って行ったロボット達を追って右のドームへ。
まさか、ロボット達の目的は……。
(最悪、準備しておいた方がいいか……)
階段への道すがら、博士は予備の機械で、何かを操作した。