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青い稲妻  作者: 北村美琴
第2部イリア編
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思い託してその2

「そん、な……」


 その言葉を聞いた時、衝撃で誰も声を発せない状態だった。

 マヤは口を両手で隠し、瞳を滲ませる。

 フィールズ博士、バリー、ジンはあんぐりと口を開け、呆然としている。

 圭一、中島、クローンもほぼ同様。

 メドゥーが膝から崩れ落ちた。


「本当、なのかよ」


 看護ロボットが悲痛な表情で、先ほどと同じ言葉を頷きながら繰り返す。


「エエ。本当デス。マグサンノ命ハ、タッタ今……。燃エ尽キマシタ」


 そう告げて医務室の中へ戻って行く。


「く、くそっ!!」


 メドゥーが慟哭しながら両拳で床をガンガン叩く。


「マグ……。マグ……!!」


 博士、バリー、ジンも涙が溢れて来た。

 隣でマヤがすすり泣く。


「メドゥー、サン……」


 クローンがメドゥーの赤くなった拳をそっと包む様に握る。


「クローン……」

「エエ」

「守れなかったよ……。俺は……、あいつを……」

「デモ、マグサンハ立派デシタ」

「クローン……。うっ、ううっ……」


 クローンも、一緒に泣いた。

 それからしばらくして。


 コン、コン。


 ノックの音と共に、医務室前で待機していたメドゥー達が、中に入って来る。

 もう涙は流してはいない。

 泣けるだけ泣いたのか。

「ドウゾ」と看護ロボットがマグの所に導く。


「マグ……」


 仲間達が回りを囲み見守る中、メドゥーがそっとサングラスを外されたその顔を触る。

 静かに眠る弟。

 治療の為か上半身は裸だったが、ビームで貫かれたお腹の部分には白い布が掛けられていて、確認する事は出来ない。

 それでも滲んだ血の跡から察するに、相当深い傷だったんだろうな、という事が伺える。


「頑張った、な」


 まだほんのり温もりが残るその頬の感触に、また涙が溢れそうになる。


「……ココニ運バレテ来タ時、マグサンノ意識ハマダ僅カニ残ッテイマシタ。ビームヲ受ケタ傷口ハ、確カニ酷カッタデスケド」


 看護ロボットが静かにそう説明した。

 メドゥーが問いかける。


「どのくらい、酷かったんだ?」

「ソレヲ答エテモイイノデスカ? 臓器ノ一部ガ焼ケタダレテイマシテ、治療ヲ続ケテモ治ル可能性ハ限リナクゼロニ近イ状態デシタ。ソレデモ、マグサンノ生キヨウトスル意志ニ賭ケテ、最後マデ治療シタノデスガ……」

「……そうか」

「『自分ハ、兄サンノ弟ニ生マレテ良カッタ。ミンナニ出会エテ良カッタ。圭一君、中島君、マヤチャンヲ頼ム』コレガ、マグサンガ気力ヲ引キ絞ッテ言ッタ、最後ノ遺言デス」

「マグ……」


 マヤがマグの手を握った。

 もう目を開く事は無い。

 話しかけても答えてくれる事は無い。

 また戦争で、仲間が一人、旅立って行った。


「マグ。あなたの思いは、私達が受け継ぐわ。だから、ゆっくり休んで」


 さよならは言えない。

 言いたくない。

 博士達もそれぞれの言葉で、お別れを告げた。


「ありがとうマグ。わたし達は君の強さに、支えられていたよ」

「だべ。マグはメドの弟としてではなく、仲間としても、おいら達の誇りだったべ」

「……マグ。僕は君を、羨ましいと思っていた。戦闘が苦手な僕には、マグ、君が眩し過ぎたんだ。でも君は、戦いにもいろんなやり方があると教えてくれた。コンピューターが得意なら、それを役立てればいい……と。ありがとう。おかげで僕は、自分の事が少し……、好きになれたよ」


 続けて、圭一と中島が言う。


「マグさん。マヤは僕達がちゃんと守って見せます。あと、ありがとうございます。僕達の事、信じてもらえたみたいで」

「ええ。だから安心して下さい」


 最後に、クローンが締めた。


「オ疲レ、様デシタ。マグサン」


 マグの遺体はこれからカプセルに入れられ、埋葬される。

 圭一達の星である地球、特に日本では火葬が一般的だが、ここ惑星イリアではどういう仕方をするのだろう。

 それは意外とシンプルなやり方だった。

 カプセルごと地面の中に埋めるのだ。

 カプセルも土に溶ける素材で出来ているので、自然と土に還る事になる。

 穴の中に入れられたマグが眠るカプセルを見ながら、博士達は敬礼した。

 圭一、中島も真似して敬礼する。

 本部アジトの仲間達全員が出て来ていた。

 カプセルに土が被せられる。


(さようなら……)


 これで本当にお別れだ。

 涙を拭いすすり泣く者が居る中、メドゥーが土の上にそっと一輪の花を置いた。






このお話を面白いと思って下さった方、ブクマ登録して下さると嬉しいです。

また、感想も待ってます。

ここが良かった、ここはこうした方がいい……等、色々聞かせて下さい。


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