DEX 、再登場
「危ない!」
マグは身体を盾にマヤの前に飛び出す。
襲って来た触手は、今までのDEX の物より明らかに太かった。
噂通り、体躯も何倍にもなっているのだろう。
姿は見せないけど。
「くっ」
太い触手はマグの体をがっちりと掴んだ。
ジリジリと握られていく。
マヤは自分を助けてくれたマグを離すようにと、触手にナイフを突き刺した。
が、刺さらない。
表面で跳ね返る。
こんなに固くなったのか。
「マグ!」
メドゥーが拳に武具を装着した。
触手を殴る。
痛みが武具を通して拳に伝わって来た。
「……っ。効かない……」
亀裂も入らなかったか。
ジンがペンライトを出す。
「ジンサン。モシ触手ニコーティングデモシテアリマシタラ、光ヲ通シマセンヨ」
「触手じゃないべ。おいらの狙いは、ここだべ」
ペンライトの光で、マグを照らした。
ススッ。
ジンの機転でマグの体が縮み、DEX の触手から逃れる。
地面に落ちた彼をジンが手のひらに乗せて車の近くに運んだ。
「う~ん。小さくなったマグは、かわいいべ」
「なっ。助けてもらって何なんですけど、早く元に戻してもらえませんかねえ。……う、痛た」
「マスコットみたい、だったんだけどしょうがないべ。今元に戻すから、ちょっと待つべ」
下ろしてもう一度ライトの光を当てる。
マグの体が元に戻った。
「う……。DEX の触手は……」
「マグ。あっちはメド達が押さえてるから、ドクターに傷を見せるべ」
ジンの言う通り触手はメドゥー、クローン、圭一、中島ががっちりと押さえ込んでいた。
「メ、メドゥーサン。コノ触手太スギマスヨ。私達ダケデハ……」
「そ、そうだな。思ったより持たないかも、っ」
「うわ~。中島~」
ブワッ。
四人は引き剥がされた。
博士とバリーに守られていたマヤからも、「あっ」という声が出る。
しりもちをついたようだが、四人は大丈夫だ。
触手は一旦草むらに下がる。
隠れた。
が、本体が出て来るような気がする。
今のうちにここから離れた方がいいだろう。
マグが乗って来た車もある。
そう判断したフィールズ博士はすぐ全員に車に乗り込む様に告げた。
今日の目的は果たした。
巨大化したDEX とまともにやり合うのは止めた方がいい。
この状態では、はっきり言って戦うのは無理だ。
「博士。全員車に乗リマシタ」
「うむ。では出発しよう。ジン、そっちの車の運転を頼む」
「承知したべ博士。任せてくれだべ」
「待、テ」
この声は……。
いよいよ、奴のお出ましか。
エンジンをかける。
「DEX 、我々は待っている暇など無い」
「ツレナイ、ナ。フィールズ」
ズン。
デカい。
なんという大きさだ。
神殿で対峙した時より三倍、いや、五倍ぐらいはあるんじゃないのか。
あくまでこちらの感覚だが。
「くっ……」
ここまで大きく変化していたのか。
報告は受けていたが、実際に見てみるとその迫力が違う。
圭一達も固まってしまっていた。
「逃ゲル、ノカ? フィールズ」
「……ああ。今は遊んでやる事は出来ない」
「遊ビ……。私ノコノ身体ヲ見テ、『遊ンデヤル』カ。強気ダナ、フィールズ」
「ああ。お前の中にいらっしゃる王様と約束したのでな。必ずお前を、止めてやると」
「ナラ……」
「言っただろう。今は出来ないと」
車を動かす。
フィールズ博士の車に続いて、ジンの車が出発した。
ブオオオオン。
あの巨体だ。
こちらが飛行状態で最大速度を出しても、追いつかれるかもしれない。
が、出来る限り引き離して、途中で撒く事さえ出来れば……。
「あ……」
飛ばす車の後部座席で、圭一が振り向いた。
「圭一君、マヤ、後ろを振り向いちゃ駄目だべ」
博士の考えをおおよそ理解しているジンは、車のハンドルを必死に握り、フロントミラーでチラリと確認したあと彼らに声をかける。
「け、けど……、DEX が追いかけて来てますよ」
「そう。だから逃げてるんだべ。挑発したと思われるとまずいから、あんまり奴を、見ない方がいいべ」
「は、はい」
フィールズ博士、クローン、メドゥー、マグを乗せた先行の車は、右へ大きく曲がる。
AIが最適なコースを探してくれているらしい。
「そ、そうか。この先は確か……」
「どうしたべバリー?」
「確か……、エアータが通る、鉄橋があった、はず……」
「鉄橋? ならあの大きさのDEX は通れないべ。さすが博士だべ」
前の席の二人がそう会話してるのを聞いて、圭一達三人は安心する。
「鉄橋を渡るんだね。じゃあ大丈夫かな、マヤ」
「ええ」
「へへっ。あいつに、目に物見せてやりたいぜ」
「目に物って……。何か当たり前の事言ってる?」
「あ、違うんだマヤちゃん。これは地球の言葉で、相手に対して、『痛い目に合わせる』とか、『思い知らせてやる』って意味で使われるんだ」
「そうなんだ。勉強になるわ中島君。いろいろ知っているのね」
「へへっ。あ、鉄橋ってあれかな?」
崖と崖とを繋ぐ橋。
カープで大曲りする時、確かに線路らしきレールも脇に見えていた。
車が鉄橋に入る。
今はこの路線、戦争の為にエアータは走っていないらしい。
戦いの終息が見えたら、再開する予定だ。
飛んで追いかけていたDEX は、鉄橋の手前、崖の上で止まった。
AIの予測通り、鉄橋には入れなかったとみえる。
「やったよマヤちゃん! あいつ、追いかけて来れない」
「ええ、そうね」
運転中のジンも、この時ばかりは圭一達が振り向くのを咎めなかった。
ガタゴトガタゴト。
翼を出していると入れなかったので、飛行モードを解除して鉄橋の上を走る。
少し揺れるが、仕方がない。
このままDEX を撒いて本部に戻る。
という手順だった。
が――、
「逃ガサナイ」
危険を察知したAIがブザーを鳴らし博士達に知らせる。
橋の真ん中あたりで停車した。
全員振り向く。
DEX の瞳が光っているのが見えた。
「ま、まずい! あれは……」
「兄さん、ビームだ!」
「皆サン。伏セテ下サイ!」
ドカン。
DEX の放ったビームが鉄橋に直撃し、煙が舞い上がった。




