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回らないガチャ

準備は万端。

発注も完了。

場所も確保。


さあ無料ガチャのお披露目よ!


と意気込んで来たものの、早速トラブル発生だ。

頼んでいたはずのアイテムが来ない。


「セバスチャン、どうなってるの?」

「大量発注をしたので、普段は使わないような配達業者も集める必要があり、輸送が滞っているようでーす」


日が昇るより早く集まりガチャ施設となる店を、国内でも有数の大人気ダンジョンの前に構えて準備を始めていたが、もうダンジョンにも冒険者は来はじめている。


「仕方ない、今あるアイテムでやるわよ!」


初日の大ボーナスだ!

半分以上の確率で大当たりのスカーレット家の武器やアイテムが手に入る。

金銭的な収支を考えるなら、決してやるべきではない判断だろう。

しかし、これは無料ガチャだ。

お金のことなど気にしたって仕方がない。


「さあ、ガンガン回して、ガンガン当たってもらおうじゃないの!」

「なんだか今日はテンションが違えな」

「何事も初めが肝心ですからな」


大当たりのアイテムたちを店の前面に並べて冒険者たちの興味を引く。

看板にも無料ガチャと大々的に銘打った。

飾りつけも万全だ。

さあ来い、冒険者。

まずは見るからに力のある屈強な冒険者が店の前を通る。

しかし、店には目もくれず、そのままダンジョンへと突入する。


まあ当たりと言っても初心者にとってだからね。

歴戦の冒険者には物足りないか。


次はまだあどけなさが残る少年たちだ。

物珍しそうに店を横目で眺めながら、そのまま通り過ぎていった。


ああいう子達にこそ使ってもらいたい残念ね。


それからも凛々しい青年や老いた魔法使い、エルフやドワーフなど多様な冒険者が店の前を通り過ぎていく。


「ちょ、ちょっと! みんな、無料ガチャよ! 無料なんだから引いていってよ!」


通り過ぎていく冒険者に声をかけるも、一瞥されて通り過ぎていく。


ええ、どうして?

それからも冒険者への声かけ、客引きも頑張ってみたが、何故か誰も引こうとしない。


「なかなか上手くいかないーですね」

「んー、客は来なそうだし、俺は酒場に行ってるわ」


ひどい!

私は目で訴えたがアーサーは気に求めずにそのまま去っていった。


「お嬢様、私も少し席を外しても構わないでしょうか?」

「そんな……エドワード、貴方もなの……?」

「いえ、私は酒場ではないですが、きっとお嬢様のためになるのでお許しいただきたく」

「ええ……いいわよ、どうせ誰も来ないもの……」

「アイテムも来ーない、人も来ーないで、ちょうど良かったかもしれなーいですね」


もう何よ……

頼りになる仲間だと思ってたのに敵ばっかじゃない……

いいわ、私はそれでも挫けない!

諦めずに声を張り上げて宣伝を続けた。

私の声は冒険者の耳には聞こえない魔法がかかっているのだろうか。

いや、こちらは見てくれるから、届いているはずだ。

でも、ガチャを引こうという人は現れない。

開始直後はまだ薄暗く、看板の無料ガチャの文字もハッキリとは見えなかったが、もはやそんな言い訳は効かないほどに、太陽は高く登っている。


「あー、お嬢様……」


セバスチャンが何かを言いかける。

一回帰ろうとかそんな話かしら。

まだ諦めるつもりのない私は藁にもすがる思いで、何かないかと辺りを見渡す。

すると、ダンジョンに来るにしては違和感のある団体が目に入った。

まだ幼い子供たちが5、6人、どことなく楽しそうな雰囲気でこちらに向かってくる。

幼い子供がダンジョンに来ること自体はそれほど珍しくもないが、子供であってもダンジョンに来るということは、もう自分の生命をかけるしかないという決死の覚悟と悲壮感が漂っていることが多い。

こんな遠足気分で来る子たちがいるかしら……?

そんな子供たちを引率していたのは見知った人だった。


「お嬢様、遅くなりました」


子供たちを引き連れてやってきたのはエドワードだった。

この店を盛り上げるために、知り合いの子供たちを連れてきてくれたらしい。

やっぱり頼りになるのは先生だけだったのね!

ついに、無料ガチャが始めて回される時がやってきた。


「おめでとーうございーます!! 大当たりでございーます!」


記念すべき1人目の子はスカーレット家に保存されていたマジックシールドを引き当てた。

それからも続々と剣やらポーションやら、時にはアクセサリーまでスカーレット家に保管されていたアイテムが子供たちの手に渡っていく。

当たる度にセバスチャンも良い感じに盛り上げてくれるので、店の周りには興味を持った冒険者たちの人だかりが出来始めていた。


「先生! ありがとうございます。お陰でようやくガチャを使ってもらえそうです」

「何事も初めが肝心とは言え、最初に未知のものに挑戦する勇者はなかなかいないものです。"無料"というのは魅力的ではありますが、普段から警戒心の強い冒険者たちは何か裏があるのではと勘繰ってしまったのでしょう」


ああ、なるほど。

相手の立場で考えられてなかったわね。

私にとっては当たり前の無料ガチャだけど、初めて聞いたらそんなものがあるはずないと思ってしまうわよね。


「それにもう一つ大きな問題もあります」


本当に無料だと信じてもらえない以外にも何か問題があるの?

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