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そうだ。ガチャを引こう。

このエタオブの世界も他のソシャゲと同じくガチャが大事だ。

ガチャを引くことで新しい武器を入手したり、武器を強化したり、回復薬のような戦いを支援するアイテムが入手できる。

課金はせずともそれなりに楽しく遊ぶことができるのも良いところだ。

まだまだ夢は覚めなそうだし、せっかくならガチャで強い武器を引いて、無双人生で楽しみたい。


でも、ガチャってどこで引けるんだろう?


当然ながら目の前にシステム画面があるわけでもなく、ましてや念じたらメニューが表示されたり、「ステータス」と唱えたら何か画面が表示されるなどということもなかった。


んー、どうしたもんか。


とりあえず、辺りを探索するためにも部屋を出る。


「お嬢様!どうなさったのですか!?」


慌てた顔で燕尾服を着た年配の男性が駆け寄ってくる。


「どうもしてなくてよ。貴方こそどうしたのよ、ダニエル」


ダニエル。そう彼はダニエル・カリーニンだ

エブリン・スカーレットの執事で常に彼女をサポートしてくれる。

確かにゲームの中にも登場していたが、驚くほど自然に名前が出てきた。


「どうしたではありませんよ。寝間着のまま部屋の外に出るなんて普段の貴女では考えられない行動だ。何かあったのではと心配するに決まっているでしょう」

「あら、ありがとう。じゃあ至急、街に行きたいのだけど、準備を手伝ってくれるかしら?」


せっかくなら彼の力も借りて探索するのがいいだろう。

まだ状況を理解しきれていない私がウロウロするのも良くないことだ。


「街ですか……?珍しいですね。何か欲しい物があるのでしたら、私が代わりに買っておきますが」

「違うのよ。自分で探したいのだけど、えっと……ランダムでアイテムが手に入って、良いものもあれば、それほど使い道がないものを手に入るような、そんな制度でやっているお店を知らないかしら?」

「カジノのことでしょうか?お嬢様の年齢ではまだ入ることができませんが、どうしてもというお話であれば見学ができるように手配いたします」

「いえ、カジノではないの。お金は払っても良いのだけど、無料でもアイテムが手に入ったり、一日に一度しか挑戦できないような仕組みになっているところなのだけど」


ダニエルからの視線が痛い。

ついに私の金銭感覚がおかしくなってしまったと思われたようだ。


「お嬢様、お言葉ですが無料でモノは手に入りません。ましてや大貴族であるスカーレット家の令嬢である貴女は率先して資金を使うべき立場にいることをお忘れなきよう」

「そ、そうね……もちろん、わかっているわ」


ガチャシステムはないのだろうか。

それだとアイテムを手に入れるには普通に商店で購入するしかないのかしら。


「では冒険者がアイテムを買うようなお店に行きたいわ」

「かしこまりました。それでは街一番の店を貸し切っておきます」

「いえ!そこまでしなくていいの!もっと普通の、みんなが行くような店に行きたいの」

「平民が行く店ということでしょうか?承知いたしました。少し準備に時間がかかるのでしばらくお部屋でお待ち下さいませ」


言われるがまま、呼ばれるまで私は大人しく部屋で待っていた。

それほど長い時間は待たずに目当ての店に向かうことができたが、当然のように店は貸切状態になっており、それどころか私が通る街道の脇にも護衛が立ち、大統領でも出迎えるかのような準備が整っていた。

大げさな表現ではなく、むしろ大統領よりも厳格な警備体制なのではないかとすら感じる。

それがこの世界における私、エブリン・スカーレットの身分の高さを表していた。


「ほ、本日はどのようなご要件で?」


そんな私に相対して、気の毒なくらい緊張している店主が精一杯の笑顔で対応してくれている。

逆に胃が痛くなるわ。


「冒険者が使うアイテムを見たくて寄らせていただきました。例えば、そうね、ポーションはあるかしら?」

「ポーションですか?確かにございますが、お嬢様の口に合うようなものがこの店にあるか……」


そういって、店主は低級から高級までいくつかのポーションを持ってきてくれた。

低級ポーションで300ゴールドか。


「こんなに高かったかしら……?」

「め、滅相もございません!お嬢様でしたら、もちろん特別な割引価格で提供させていただきますし、なんならこのポーションは無料で差し上げます!」


ああ、またダニエルからの視線が痛い。


「ああ、ごめんなさい、値切ろうとしたわけではないのよ」


自然と疑問が口から出てしまい、ただでさえ顔色が悪い店主をさらにカエルに近づけてしまった。

しかし、私の記憶では低級ポーションは100ゴールドくらいだったはずだ。

ゲーム内の価格設定と3倍も違っている。


「無料といえば、こういったポーションとかを無料で配布している店を知らないかしら?」

「で、ですから、こちらのポーションは無料で提供させていただきますので!」

「いえ、私にではなく、どのような冒険者でも無料でもらえるような店、というか仕組みかしら、そういったものがないか知りたいのだけど」

「どのような冒険者でも、ですか?私どもも商売としてやっておりますので、皆に無料で配るというのは流石に勘弁していただけないでしょうか……?」


私に対しての畏怖の念が強すぎて、うまく会話が噛み合わないが、どうやら無料ガチャはないらしい。

店に陳列されている他の商品を見たが、冒険者に必要なものはどれも私の記憶よりも高い値段をつけられていた。

特に低級ポーションのような低価格帯のアイテムや武器の値段は高騰している。

無料ガチャもなく、価格も高騰していたら、この世界で冒険者をやるのはさぞかし大変になってしまうだろう。

いや、もしかして無料ガチャがないから価格が上がっている……?


「ありがとう。迷惑をおかけしたわね。ダニエル、お詫びにここの品物はすべて買い取ってあげて」

「かしこまりました」

「す、すべてですか!?ありがとうございます!!」


このくらいのアイテムを買う程度の支払いはスカーレット家にとっては大したことはないはずだ。

……多分。

貴族の令嬢になったら一度言ってみたかったのよね。





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