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灰島 アカネ警部補、刑事部組織対策本部・暴力団対策課(旧刑事部第四課)課長補佐、羽根山署の中で最も恐れられている警察官だ。灰島より下の署員たちは「どっちがヤクザか分からない」と言ってしまうほどに狂暴だという。そして彼に関わった暴力団員や半グレなどは彼の姿を見ただけで震えあがってしまうほどだ、と。
「あ、あの…!」
洋輔は震える足を叩いて、灰島 アカネに近づき声を掛けた。
「灰島警部補、失礼します。私、捜査一課の」
「知ってるよ。熊井さんから聞いた。まだ一昨日の事件、右往左往してんのかよ…ホント、ここの一課って無能しかいねぇのな」
「で、ですが! 相手がΩでして、それを考慮した捜査を行わないといけませんので」
「はぁ……ったくよぉっ!」
アカネは玄関先の看板を思い切り蹴り倒して署内へ入って行った。洋輔は凹んだ看板を元の位置に戻して、急いでアカネを追いかけた。