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3


 筋を通した洋輔は一課に戻り、通常業務をこなしていく。


「東海林、お前地雷踏んだんだって?」

「え?」


 隣のデスクの先輩にそう言われて洋輔は手を止めてしまう。


「地雷って、何の地雷ですか?」

「長興課長のだよ。さっき俺も聞いたんだけど、課長って灰島警部補と結婚考えてたけど、相手にされなかったからヤケクソで今の奥さんと警視正の勧めで見合いして結婚したってよ」

「え」


 洋輔は横目でちらりと崇文を見た。崇文とアカネ、美形同志だがカップルとしてはあまり絵が浮かばない。というかアカネが番われるところが想像できない。


「課長と灰島…警部補って何か関係あるんですか?」

「課長は大卒、警部補は高卒で同期だって。警察学校も同じ時期だったらしい」

「それにしても階級とか色々…」


(あ…そうか……灰島さんはΩで課長はαだ……)


 気付いたのでそれから先の言葉は口をつぐんだ。


「でも警部補もΩで珍しいよな、35歳で独身って」


(それは、もう子宮がなくて発情期もなければ番もないって……あれ、課長ってこのこと知ってんのかな?)


「離婚歴もなくて未亡人でもない…ま、後者なら長生きできないけど」



 番として心身が結ばれたαとΩは「死が二人を分かつまで」という言葉通り、運命共同体となる。どちらか一方が死んでしまうともう一方も道連れされるように死んでしまう。現代医療でも延命治療しかできない奇病である。

 一般的に番として結ばれるには、Ωの発情期にαと性交渉し、その際にαがΩの首元を強く噛んで歯形を残して所有の証を残す。

 洋輔はこのことを十分に理解し、真面目ゆえに未だ童貞である。



 黙って考え込む様子の洋輔に先輩は肩を組んで耳打ちをする。


「何? お前警部補に惚れた?」

「……ぬあ⁉ ほほほほほ惚れてませんよ!」


 洋輔は立ち上がって大声で否定すると、皆が一斉に洋輔を見たので背中を丸めながら着席した。

 揶揄った先輩は悪びれる様子もなく「まぁまぁ」と洋輔を落ち着かせた。


「惚れたとしてもやめとけ。昨日の青井の若頭の逮捕でとんでもねぇことになってるって噂だ。下手したら番った瞬間に命なくなるかもよ」


 先輩の声色が深刻なものになったので洋輔も少し緊張する。


「青井興業は六道会(りくどうかい)の二次団体、お前が担当してる田中 ツカサは六道会の会長と懇意だったらしい…が、田中が青井 凌雅のΩに殺され、死体遺棄を組の連中が協力した。六道会を潰す為に誰かが動いてるんじゃねーのって」

「そんなの任侠映画の世界じゃないですか」

「それについて灰島警部補が動いてるってさ。だから警部補も命危ないんじゃね?」


 噂は噂、と思いつつも洋輔は背中が凍る感覚になった。


「下らないこと言ってないで仕事しましょうよ」


 そう先輩に言ってパソコン画面に目を向ける。だがこの言葉は自分に言い聞かせたのであった。


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