今日も今日とてブリジットは絶好調
「いきなり私のご主人様に事前連絡をせずに呼びつけるなど、いくらクラスメイトと言えど失礼では?」
「ブリジット……」
「申し訳ございませんっ」
そしてここぞとばかりに嚙みついては無駄に事を大きくしようとするブリジットへ一声かけて下げらせる。
まるでブリーダーに躾けられた犬みたいだなぁ、と思うのだが決して口にはしない。
それはブリジットに失礼だからというわけではなく、言った瞬間『その卑しい犬めに首輪をつけて下さいっ! なんてたって私はご主人様から見れば犬なのですからっ! そして、犬には首輪を付けるのが常識ですっ!!』と即座に返ってくるからである。
「ご、ご主人様っ!! 騙されてはいけませんっ!! どうせこの発情した雌犬から愛の告白をされるだけですっ!! 既に私という者がいるので無闇にこれ以上(雌犬を)増やす必要はないかと思います!!」
そして今日も今日とてブリジットは絶好調である。
見て欲しい、あのカレンドールの『見ていけない得体の知れない何か』を見てしまったような表情を。
俺も初めのころはカレンドールと同じような感情であった為、地味に親近感すら湧いてくる程である。
あとブリジットが自分の事を上げた時に『雌犬』とルビが振られていたのはきっと俺の勘違いに違いない。
「流石にあり得ないだろ……」
「いえ、いかなる場合も最悪の事態を想定しておかなければなりませんっ!! そもそもご主人様はご自身の魅力に鈍感すぎますっ!!」
「分かった、分かったからブリジットの言うように気を付けるからっ。 それで良いかっ?」
「き、気を付けて下さるのならば……」
取り敢えず話が進まない為ブリジットをなだめ、ブリジットの言う通り気を付ける旨を伝えると渋々と言った感じではあるものの引きさがってくれたので良しとしよう。
心配してくれているのは有難いのだが、心配のベクトルがおかしな方向へ向いている場合が多々あるのでそこだけは直してほしいかぎりだ。
「もう良いかしら?」
「ごめん、待たせたな。 では、校舎裏へ向かうか」
「はいっ! ご主人様っ!」
「ブリジット……」
「? なんでしょうか?」
「お前は教室に残っていなさい」
「そ、そんなっ!?」
そして俺は、まるで捨てられた子犬のような表情をするブリジットの視線を振り切ってカレンドールと共に校舎裏へと向かう。
校舎裏には修練用の施設があり、その中の室内修練場を借りて中へとカレンドールと一緒に入って行く。
自分的にはパパっと話して終わりだと思っていたのだが、どうやら他人には聞かれたくない事のようで少しばかり身構えてしまう。




