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閑話ー奴隷娘の休日5

 気の知れた友達とこうして休日を一緒に過ごして、恋愛話に花を咲かせ、思い人のプレゼントを一緒に相談しながらあーでも無いこーでも無いと選んだりできる未来が来ようとは、一体誰が想像できようか。


 私自身が想像できなかったのだ。


 そもそも、奴隷商人に売られる前の私ですら、まさかこんなにも幸せな生活ができるようになるなんて想像すらできなかった程である。


 長期間の干ばつによる作物の不作により親に売られた時は、人生どうなるか分かったものではないと思ったし、今現在もまた、人生どうなるか分かったものではないと思ってしまう。


 今ではご主人様に許可を取って、両親へ手紙を月一回送っているくらいなのだから、人生どうなるか分からないものだ。


 幸い妹たちは、ここ最近豊作という事でまだ売られてはいなかったのだが、そもそも豊作といえどその日食うのがやっとである為、それ故に資産を蓄える事が出来ずに子供を売る羽目になったのだし、そんな生活だからこそ私は痩せ細っており、ご主人様以外の客からは見向きもされなかったように、妹たちもまた痩せ細っているであろう事が容易に想像できてしまう。


 そのため手紙と一緒にご主人様に仕送りをしたいと申した所『お金は人を簡単に狂わすから、金銭ではなく物資にしなさい。 もしここで君が仕送りをするようになったら、君のご両親はきっと君の仕送りを目当てにして生活する様になるし、返ってくる手紙の内容も金の無心とかになるかも知れないからね。 そんなのは君もいやだろう?』という有難いお言葉を受け、手紙と一緒に干し芋等日持ちする食料を送るようになった。


 これで少しは栄養をつけて、大きく健康に育ってくれればと思う。


 ちなみに、ご主人様から『家族を恨んでいないのか?』とも聞かれたのだが、恨んではいない。


 むしろこれが農民、その中でも痩せた土地である村の日常であるのだ。 


 私を売らなければ家族全員が死んでいたか、誰かを口減らしに殺していただろう。


 その誰かとは間違いなく私であり、そして両親は私を殺す度胸もなく、そして生き残る可能性がある奴隷へ売り渡したのである。


 それが、両親が私を愛していた何よりの証拠だと分かっているからこそ、恨む事などあろうはずがない。


 その事をご主人様に告げれば『住む場所違えば価値観も変わる、か。 ありがとう』と言われ、頭を撫でられた。


 きっと産まれた時からお貴族様であるご主人様にとっては一生分からない世界なのかも知れないけれども、それでも私たちの境遇を知ろうとしてくれている事は素直に嬉しかった。

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