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なんとも皮肉なモノである

 父上だけ仲間外れは可哀想だし子供や奥さん達と同じように俺の奴隷へと堕としてあげるべく一箇所に集めて全員正座をさせながら全員一度で一気に契約を終わらせた。


 因みに弟と父親は数発殴れば自ら志願して奴隷にさせて下さいと懇願されたので、わざわざ奴隷にしてあげる俺はやっぱり家族想いの優しい兄である。


 しかしながら皆、俺を見る目が怒りに満ちているような気がするのだがきっと気のせいであろう。


「では早速、自ら志願して(・・・・・・)俺の奴隷となってくれたやる気のある君達には仕事を与えるとしよう。 何、簡単なことだ。 ただ真実を言うだけで良いのだからね」


 俺は出来るだけに優しく話しかける。


 それなのに新しく手に入れた奴隷達は全員敵意剥き出しで隠そうともしないので困ったものだ。


「貴様? 何がしたい。 実の父親を奴隷にした時点でお前は周囲から奇異と畏怖の目で見られるだろう。 いい気味だ」

「何がしたい、ですか。 先程言った通り真実を話して欲しいんですよね。 ただそれだけです」

「何が真実だ馬鹿らしい」


 そして、一応一番うるさくなさそうな父親にだけ発言の許可を出しているのだが、主人である俺に対して偉そうな物言いで噛み付いてくるが、いまだに俺が何を求めていないのか分かっていないようだ。


 まったく、物分かりの悪い奴隷だと苦労するのは所有者である俺であると言うのに。


 しかしながらそれそ言った所で前に進まないので口には出さず、グッと堪える。


「そう、真実ですよ。 ただ、皆様で然るべき場所に行き、我がクヴィスト家で厳重に守り隠している証拠を持って真実を喋るだけで良いんですよ」


 そう言うと俺は、最近禿げかけた父上の髪の毛を鷲掴みにすると俺の目線まで持ち上げて至近距離で睨みつけながら口を開く。


「俺の母親を殺した証拠と、犯行動機から犯行の方法まで全て嘘偽りなく皇帝陛下への謁見にて全て、そこにいる義理母上と一緒に洗いざらい話すだけで良いんです」


 そして俺は満面の笑みを浮かべると、父上と義理母上は顔面蒼白となり、打てば響く太鼓の如く偉そうに噛み付いてくる事もなく油汗を流しながら金魚のように口をパクパクさせるだけとなる。


「……そ、それは既に事故として終わった話だろう? 今更言う事など何も無いだろう。 な? 考え直せ──」

「は? お父様が偽造したんでしょう? 自分のケツくらい自分で拭いてくださいよ。 じゃあ、今から奴隷の所有者権限で命令するので洗いざらい真実を思う存分皇帝陛下やその他貴族がいる謁見の時にでも話してきてくださいね。 たしか、次の謁見はっと、三日後でしたね。 わざわざ謁見の日まで、今まで復讐を待ってあげてた俺はなんて優しいんだろうか」


 そして俺は父上と義理母上へと奴隷を手にしてから初めて私利私欲で命令をする。




 母さん、やっと復讐できたよ。

 でも、やっぱり俺には殺せなかった。




 あれ程殺してやりたいと思っていたのに前世の記憶と共に復讐できる力を手にしたら、一緒に流れ込んできた前世の価値観で殺せなくなるとは。


お陰で殺すよりも、もっと爽快な復讐が出来た。


三日後、全ての悪事を話した彼らは恐らく処刑される事だろう。


 そして、母さんとの思い出が詰まったこの屋敷だけ()守る事ができた。


 そう思いながら俺は自虐気味に笑うのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] お疲れさまでした。 前世の自分と今世の自分、どちらかの記憶や経験が大きくウェイトを占めるのか。 それが転生者にとっての己の価値観を決めるのは当然だろう。 転生者の価値基準の自分を自分…
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