今日一番の笑顔で告げる
「そ、そうよっ! 流石私達のお兄様ですわねっ!! す、凄いですっ!!」
「え、ええ。 あなたはわたくしの自慢の息子ですわ」
ああ、やっぱりコイツらといると気分が悪くなる。
自分達の置かれている状況、お互いがこの決闘を終わらせたいと思わなければ続き、当然逃げる事など意味をなさないという状況に気付いた為、俺の怒りを褒めて鎮めようとしているのだろう。
こんな安っいゴミみたいなプライドで俺はずっとこの家族にいじめられて来たのかと思うと反吐が出る。
「お、おいっ! 降参だっ! 俺たちの負けだと言っているだろうっ!? 早くこの決闘を終わらせろよっ!! 兄さんの凄さは十分に分かったからさっ!」
「そ、そうよっ! それに無抵抗な人間を痛ぶって何が面白いって言うのよっ!? 兄さんはそんな事をするような人間じゃないものねっ!?」
「そ、そうですわよっ!! それに、この子達は貴方にとって可愛い弟と妹ではないですかっ! もうこんな事はお止めなさいっ!」
実に、耳障りだな……。
「俺はな、できたにんげんじゃないんだよ。 聖人君子でも何でもない。 だから、バカにされれば腹も立つし、暴力を振るわれれば恨む、出来損ないの人間なんだ」
「そ、そんな事はないぞっ! うん。 二種類、それも火と水という相反する魔術を扱えるなんて本当にすごいよっ!」
「か、回復系魔術も使ってたので三種ですよっ! 火と水と光の三種類なんて宮廷魔術師でもそうそういないわっ!」
「さ、流石わたくしの息子、クヴィスト家の息子ですっ! わたくしも鼻が高いですわ」
何というか、本当はもう少しコイツらをボコボコにしたかったのだが、俺に縋り付いてくるコイツらを見ると、途端にどうでも良くなって来た。
好きの反対は無関心というように、嫌いの反対も無関心なんだという事が分かる。
関心を持つという反対は無関心という事なのだろう。
要するに、今のコイツらは俺にとって路傍の石ころと大差ない。
「なぁ、お前達はもし今日俺が抵抗せずに止めてくれと言ったら止めてくれたのか?」
「と、当然──」
「嘘をついた瞬間殺すぞ? 三下。 自分の発言には責任を持って話せよ? それで、当然なんだ?」
「と、当然……や、止めなかったです……」
「だよなぁ? 止めるわけないよなぁ? で、どうすんの?」
「へ?」
「どうすんのっつってんだよ。 聞こえないわけ? それとも今回契約した内容すらもう忘れてしまったわけ? この決闘を止めるルールだよ」
「そ、それはちょっと……」
「も、もうバカにしないから。 ね?」
「は、半分ですが血、血のつながった兄弟なんですのよ?」
「そうかそうか。 俺もそこまで鬼じゃないからな」
そして俺は今日一番の笑顔で告げる。
「ここで殺されるまで俺のオモチャにされるか、俺の奴隷になるか、選ばしてやるよ」