俺の教育方針
そして俺は指を『パチン』と鳴らし、弟であるグエンの顔面目掛けて火球を放つ。
「う、うわっ!?あぎゃっ!?あ、熱いっ!熱い熱い熱い熱い熱い熱いっぃぃいっ!?」
俺からしてみればわざわざ指を鳴らしてから、しかもグエンと同じく低級魔術である【火球】をお返しに放ってやったのだが、グエンは避ける事も出来ずにそのまま顔面で俺の火球を受け止めると、その熱さで悶え苦しみ、地面を転げまわる。
しかし、魔術で放った火が転げまわった程度で消える訳も無く尚も燃え続け、そして転げまわるグエンの姿を家族は鳩が豆鉄砲を食ったようにただ眺めているだけで誰一人助けようと行動に移さない。
「ちっ」
そんな家族に俺は舌打ちを打つと【水球】をグエンの顔面目掛けて放ち、グエンの顔で燃える火球を相殺して消してやる。
「バカなの? お前ら。 グエンを見殺しにするつもりだったってんならそれで構わないんだが、魔術で生まれた物はそれに使われたエネルギー、この場合は魔力が無くなるまで消える事はない事ぐらい常識だろうが。 そんな事すらも分からないのか?」
「あ? 言いたいことはそれだけか?」
せっかくこの俺がわざわざ、助ける必要が無いにも関わらず助けてやったというのに、我が父上はこの上なくお怒りのようで、その後ろに弟と妹が父上の怒りのとばっちりを喰らわないように隠れてしまう。
「は? 弟の命の恩人に対して感謝こそすれ、その態度は何ですか? 父上。 助けて頂いたら感謝する。 平民の子供でもできますよ。 そんな事すら出来ないとは、我がご先祖様たちも泣いておられよう」
「だ、黙らんかぁぁあああっ!! このゴミムシがっ!! そもそも貴様の母親ですらこの女の癖に俺様を見下したような視線で常に指図してきやがってっ! その女と同じ顔をした貴様も一緒にあの日殺しておくべきだったわっ!!」
そして父上は俺の煽りに簡単に乗せられて、感情の赴くまま初級の中でも上位の魔術【火炎球】を連続で、俺めがけて放って行く。
そもそも公爵家という肩書に加え、気に入らない者や少しでも口答えする者は排除してきた環境で暮らして来た父上は煽り耐久など無いに等しいのだが、こうしてみるとただただ滑稽としか言いようがない。
この光景を言うなれば──
「大きな子供が癇癪を起して暴れているようだ」
「はぁ、はぁ、き、貴様……何で平気でいやがるっ!?」
流石公爵家当主と言った所か、この世界にしてはそこそこの魔力量を持っていたようだが、それも一気に消費してしまっては話にならない。
「俺の教育方針は言って聞かないクソガキは物理で黙らすという方針なんですよ。 特に命に係わる悪戯や悪ふざけ、その他諸々はね。 何か起きてしまってからは取り返しがつかないから、そうなる前に分からせる。 止める理由が体罰が怖いからという理由でも良い。 取り返しのつかない事が起きてしまうよりかは百倍マシだと思うからね。 賛否有れどそれが俺のやり方なんですよ、父上」




