契約魔術
「言わせておけば調子に乗りやがって」
「口答え出来ないくらいぶっ潰してげるわ」
「お前達、俺は何があっても止めないから思う存分に暴れて来たまえ」
「「はいっ! 父上っ!」」
そして、そんな会話を聞きながらクヴィスト家が待つ魔術訓練用の野外グラウンドへと足を運ぶ。
うん、全くと言っていいほど良い思い出が一つも思い出せないとはまた清々しい程の屑だなと俺は再確認する。
思い出せるのは父上により杭に磔にされてまだ幼い弟と妹の魔術の的にされた思い出など、そういう思い出ばかりである
「あっ! お母様っ!」
「お母様も見ていかないですかっ!? 私達これからこのゴミを使って魔術の練習をするのですっ!」
「何だ、お前も来ていたのか」
「ええ、あなた達がここで魔術の練習をするのだと耳に入ったものですから」
そして、俺の義理の母親も来たみたいである。
あまりにも主演が綺麗に揃っている事に疑問を覚え周囲を見渡すと、見たことある顔のメイド服を着た使用人が軽く会釈した後俺にだけ見える角度で『ビッ』と親指を立てているのが見えた。
一体どこで覚えたんだか……俺か。
「それで、ルールはどうしますか? どちらかがギブアップするまででよろしいでしょうか?」
とりあえず、俺は罠を仕掛ける。
こいつらの事だ。 これが罠であると気付かずに食いつくであろう。
「はっ!? バカなの? そんなのお互いに気が済むまでやるに決まってんじゃん」
「本当それ。 ルールはお互いに気が済んだら終わりよ。 あんたが辞めたいと言っても私たちに辞める気がなければ続けるからねっ!」
「お前も兄なら弟や妹よりも先に根をあげるようなみっともない真似はするなよ? もし先に根を上げた場合は、魔術の訓練が終わった後に俺からお仕置きをしてやろう」
「まぁ、あのブサイクの息子らしく、美しいわたくしの子供達のおもちゃになる事ねっ!」
「分かりました。両方が音を上げるまでで|どちらか片方が音を上げても無効という事でよろしいですね?」
あぁ、本当にこいつらがバカでよかった。
これで心置きなく俺の気が済むまでやれる。
「だからそう言ってんだろがっ!」
「何度聞いても同じよっ!」
「フン、本当に物覚えが悪いゴミだな、お前は」
「ねぇ、早くこんな汚らしい生き物を叩き潰しなさいよ」
そう宣う俺の家族の罵声をBGMに俺はとある契約魔術を展開する。
「確かに、あなた方の言質は頂きましたので契約魔術で契約させて頂きます。 もし約束を破った場合は、破った側が全員破られた側の奴隷となるという契約内容なので、奴隷になりたくなければ先程お互いに交わした約束は絶対に破らない事です」