日本人故の悪い癖
とりあえずのらりくらりと弟達の戯言を適当に流してやり過ごそうと思っていたのだが、いつの間にか父親が近くにいたらしく、弟と妹の的になれと言うではないか。
その結果、弟と妹は虎の威を借る狐の如く更に調子に乗り始め、煩いことこの上ない。
いっその事ことぶっ潰してやろうか。
とも思うのだが、人を殺せる程の度胸もなければ勇気もなく、また父親を叩きのめした所で家督を継ぐのは面倒臭く、そもそも我がクヴィスト家はタダでさえ敵が多く、そこに父上に弟や妹まで加わるといつ殺されるか判ったものではない。
俺は毎日平穏に暮らしたいだけで、お金持ちになりたい訳でも毎日暗殺される事に怯えて暮らしたい訳でもない。
そう、俺は平穏に暮らしたいのである。
決して、今のように不穏な暮らしをしたい訳ではない。
「日本人故の悪い癖が出ていたようだな」
俺はそう言うと苦笑いをする。
それは揉め事を避けると言う点であれば確かに利点はあるし美徳と言われる場合もある。
しかしながらそれは実害が出ておらず、それで物事が円満に解決できればの話である。
我を出して丸く収まるはずだった物事を、終わらなくさせるのは確かに良くない点もあるのは事実である。
それは、人間と言う生き物は皆一人一人考え方が違うからだ。
そして、日本人という人種は限界まで我慢し過ぎてしまい、最終的に潰れるかキレる。
ちなみに俺は後者である。
こちらがヤられるのならば、刺し違えてでも反撃をする、パワハラを受けたら証拠を集めて辞める時に労基に走る、そういう男である事を思い出した。
何も家督を継ぐとかそういう話に持って行かなければ良いのだ。
ただ、このクズどもが俺に対していちいち突っかかって来なくなればそれで良い。
家督など面倒事は全て弟に譲ればいい話だ。
「魔術の練習ねぇ、それもいいですが反撃はさせて頂きますよ? 俺も痛いのは嫌ですし、ただ的にされてサンドバックにされるのも嫌ですから」
そして俺がそういうと、父上に弟と妹は一瞬キョトンとした後腹を抱えて笑い出す。
「何を言い出すかと思えば初級魔術の一つも碌に扱えないカイザル、お前がかっ?」
「そ、それでも良いですよ? 俺もただ逃げるだけのゴミを甚振ってもつまらないですからねぇっ」
「私もいいわよっ。 むしろ抵抗するゴミを踏み躙って自分の無力さや惨めさを再度叩き込んんであげたいわっ! それこそ、もう二度とそういう舐めた口が聞けなくなる位にはねっ!!」
「では、反撃しても良いという条件で魔術の練習をしましょうか」