使えない奴ばかり
「あ、当たり前じゃないかっ! 男性は女性を守るのは当たり前だ」
「はぁ。 口では何とでも言えますものね。 たとえそれが本当であったとしてもあのまま行けば私は間違いなくレイプされていたでしょう。 貴方は最低な行為をして、さらに今その責任も取ろうとせず言い訳を並べている男性で、言い訳を一切しないカイザル様の方がまだマシだと思えるくらいには私に嫌われているという事を自覚するべきです」
そう言うとスフィアは画板を脇に抱えてこの場を後にする。
あの日からスフィアの様子がおかしくなり、以前までならば俺と目が合うだけ花が咲き誇るような表情を向けてくれて、常に俺の傍らにいてくれたのに最近では席が隣同士だというのに視線も合わなければ会話も無いではないか。
それをわざわざこの俺が心配してやって声をかけるだけではなく、こちらから昼食を誘ってあげるという破格の対応をしてやったと言うのに、俺が言い返さないからと言いたい放題言いやがって。
そもそも男爵家の娘の命なんかよりも皇族、それも皇位継承権がある俺の命の方が重いに決まっているだろうがっ!
あの場合は俺が口に出す前に自分から身体を賊に差し出すくらいするのが普通ではないかっ!? それすらもできない癖に偉そうな事をつらつらつらつらと言いやがって。
挙句の果てにはこの俺があのカイザル以下だと?
言っていい事と悪い事があるとなぜ分からない。
糞が。
まあいい。
俺が声をかければ喜んでついて来る女性などまだいくらでもいる。
スフィアに拘る必要などないではないか。
何故かスフィアに対して強い未練が残るのだが、その感情がなんの感情から湧き上がってきているかも分からず、分かろうとすらせず、他に適当な女性はいないかと辺りを見渡す。
するとそこにはいつの間にか野次馬が出来ており、俺を見るその目はまるで人間の屑を見るようなそれであった。
そしてその目を俺は見た事がある。
そう、カイザルを見る周囲の目にそっくりなのだ。
「そ、その目で俺を見るんじゃぁないっ!!」
畜生。
どいつもこいつも使えない奴ばかりだっ!!
周囲の貴族連中達も皇位継承権は弟に移ったのではないかと囁きだす始末である。
俺が何をしたと言うのだ。
少しだけ護衛の目を盗んで城下町へ行っただけではないかっ!! 拉致された事を理由に挙げるのならば俺ではなく、実際に拉致した賊へ言えっ!
既に拉致を指揮していた貴族の長男、賊共に牢獄にぶち込んでおり、おって処刑されるのだがそれでも腹の虫が治まらない。




