表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/265

タダでは殺さぬ

 今俺が抱いている感情はどこまで行っても偽善でしかなく、日本で暮らしていた記憶が戻ったからこそ怒りを覚えているだけに過ぎない。


 それだけに日本が平和だったという事であり、この世界は弱者にはあまりにも厳しすぎる。


 それでもこの手を差し伸べた彼女達だけでも幸せに生きて欲しいとは思うものの、だからと言ってまずは手始めに俺の護衛として育て上げる当初の計画は変えるつもりはない為、ここの環境をどれだけよくしたとしても偽善である事には変わりない。


 それでも、せめてお腹がすいて辛い等という思いだけは決してさせまいと俺は骨と皮だけで男か女かもわからない様な彼女達を見て思う。


「お前達、お湯を入れ替えるからじっとしていろよ」


 そして俺は一瞬にして黒くなったプールのお湯を入れ替えながら、いくらゲーム時代に取得していなかったとはいえ異世界転生物の代表的なスキルである『クリア』ぐらい用意しておけよな、といるかどうかも分からない神に向かって悪態を吐く。


 そして奴隷達には様々な種族がおり、エルフはその長い耳が切り取られ、ドラゴノイドは尻尾を、という風にその種族を見分ける部分を切り取られたりしている上に、奴隷達が女性であると気付いた事により極力彼女達を見ないように身体を洗っていたカイザルは、実際に回復魔術を施し、欠損部分が元に戻る事でようやっと様々な種族がいる事に気付くことが出来た。


 成るほど、俺はあの狸爺から奴隷の宝くじ(在庫処分)を押し付けられたのだと納得する。


 因みに最初に洗った子供だとばかり思っていた少女は、実は大人のドワーフらしく既に成人しているらしい。


 なので俺はロリコンでも無ければ犯罪者でもない。





「あのバカを見失ったというのか? お前ほどのものが?」

「申し訳ございません、旦那様。カイザルが奴隷を買い、森の方へお馬車を走らせたところまでは追跡できたのですが、そこからまるで幻術にもかかったかのように馬車ごとカイザルの姿を見失ってしまいました。 さすがに森の中を馬車で進むのは無理がございます為森へは行かず道ながらに隣町まで探してみたのですが痕跡一つ見つけることができませんでした」


 俺はカイザルに付けたメイドからの話を聞きながら、見失ったというメイドへ怒りをぶつけそうになるのだが寸前のところで堪える。


 このメイドはいままで暗殺で失敗したことのない程の腕の持ち主である。


 その様な者があのボンクラ息子であるカイザルを見失うであろうか?


 いや、見失うはずがない。


 にもかかわらず実際には見失ってしまったという事実に俺は言い知れぬ気持ち悪さを感じてしまう。


 彼女も人間であれば失敗の一つや二つ程あってもおかしくないのだがやせ細っていたといっても奴隷を七人も乗せた馬車のスピードなどたかが知れている上に、あんな大きな物を見失うものであろうか?


「まあよい。 次はしくじるなよ?」

「かならずや」


 そして俺は再度メイドへとボンクラ息子であるカイザルの暗殺を命じると、彼女は頭を下げると音もなく消えさる。


 カイザルが冒険者の真似事をし始めた時は神が俺にくれた暗殺のチャンスであると喜んだものだが、今はボンクラの癖に無駄に俺に苦労をかけてくるカイザルが憎くて仕方がない。


 父親をコケにしたのだ。


 タダでは殺さぬ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ