考えを切り替える
「…………」
いやまぁそうなんだが、それとこれとは話が違うというか、そもそも人を顎で使いたくないというか、本来の目的は俺自身のリフレッシュなのである。
欲しい素材があるわけでもお金を稼ぎたい訳でもない。
「ご、ご主人様だっ!?」
「へ? ほ、本当だっ!?」
そしてどうやって返答しようか考えていると他の奴隷達にも見つかったらしく、俺の前で跪いて頭を垂れる奴隷達が増えていくではないか。
うん、皆元気そうで何よりだな、等と現実逃避をしたところで奴隷達がいなくなる訳でもなく、むしろ増えて行っている。
「こちらC班っ! 冒険者ギルドにて今ご主人様を確認っ!!」
『えっ!? 噓っ!! 直ぐに行かなきゃっ!!』
あれから定期的に購入している元廃棄奴隷達の、そんなやり取りが聞こえたような気がしたのだが、きっと気のせいだろう。
ちなみに今では様々な種族の奴隷達を二十人ほど購入(というか押し売りに近い)していたりする。
彼女達には俺の事など関係ない、第二の人生を歩んでほしい。
切に願う。
「あ、集まってくれて嬉しく思うのだがここでは通行の邪魔になるだろう。 皆跪くのを止めて立つように」
「「「「は、はいっ!!」」」」
その一声で一斉に立ち上がる奴隷達。
跪いていたせいで衣服が汚れているではないか。
俺のせいではないにしろ、ある意味では俺のせいになるんだよな、と罪悪感を感じてしまった俺は近くにいた自称筆頭奴隷だというサラに付いてしまった汚れを叩いて落として上げる。
するとサラは感極まった表情をしたかと思うと奴隷達にさりげなく自慢するかのような表情をしし、周囲の奴隷達は『サラだけずるいっ!!』というような目を俺に向けて来るではないか。
ご主人様と慕っている俺の代わりに働くと言いつつ、汚れを叩き落として欲しいと相反する彼女達の要望に困惑しつつも彼女達には彼女達の、俺には到底理解できない価値観があるのだろうと諦め、汚れを一人一人落としてやる。
きっとこの光景はは端から見ればさぞ滑稽であっただろう……恥ずかしい。
そして何故跪いていないブリジットが彼女達の叩き落とし待ちの列に入っているのか、ちゃんと話し合う必要があるかもしれない。
そんなこんなで大所帯となった俺達一行は当初の目的であるリフレッシュ兼『この世界を楽しむ』という目的の為に怪しまれない程度のクエストを受付嬢に手配してもらい、目的の場所へと奴隷達と共に向かう。
こうなれば一人増えようが二人増えようが二十人増えようが同じだと諦め、むしろあまり構ってあげられない奴隷達とのスキンシップの場として使おうと、考えを切り替える。
「それで、先ほども質問したのですけれども、これからどこへ向かうのでしょうか? 何か欲しい物とかがあれば私達に仰って頂ければ可能な範囲ではありますが一言言ってくだされば探させて頂きますが……」