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食えぬ狸爺

「で、ではこちらへついてきてください。い、一応先に忠告致しますが臭いはかなりキツイので予めご了承くださいませ」

「もとより臭いことは承知の上だ」

「で、出過ぎた真似をして申し訳ございません」


 そしてやせ細った奴隷商人は公爵家の長男である俺を怒らせまいと腫物を触るかのような対応で、訳あり奴隷達がいる地下室へと案内してくれる。


 なぜ公爵家の長男が予約もなしに奴隷商へと一人で訪問、それも訳あり奴隷を欲しがるのか全く見当もつかないであろう奴隷商商人がこの俺を警戒する気持ちも分かるため少しだけ申し訳ない気持ちになる。


 そもそも人体実験目的での奴隷購入は禁止にされている為、その様な売買が行われているか視察にきているのでは? ぐらいには思っている事だろうが、俺がその気持ちを汲み取って行動してやる理由もない。


「こ、ここにいる者たちが訳あり奴隷でございます」

「ほう、ちなみに値段は──」

「──金銭を頂くなどとんでもございませんっ!! 公爵家にこの様な訳あり奴隷を売って金銭を稼いだ等と知られたら我々商売ができなくなってしまいますっ!! お好きな者をお好きな人数持って行ってくださいっ!!」


 なる程、この奴隷商人も腐っても商人か。


 この際マイナス資産になり兼ねない奴隷たちを一気に手放そうという魂胆であろう。


 いくら黒魔術などに需要があると言ってもその頻度が高いわけでもない。


 だから普通の奴隷よりも安値で売られるのだ。


 そして、死体処理もただではない上に魔術で感染対策をしていたとしても死病が正常な奴隷、最悪自分自身に移るリスクもないわけではない。


 更に空いたスペースも有効活用できる。


 目先だけで言えば損なのだが長期的には利益につながる。


 そして、そう言えば俺が全員引き取る可能性が高いとも踏んでいるのであろう。


 まったく、食えぬ狸爺だ。





 そして俺は予め乗ってきた馬車へ奴隷全て、計七名、手足の欠損奴隷が四名、死病を患っている奴隷が三名を乗せて森の中へと入っていく。


 この一か月間ただ冒険者として働いていたわけではない。土魔術で森の中に道を作り、入り口には幻術を施していたのだ。


 そして森の中を進むこと小一時間、そこには同じく魔術を駆使して作った木製二階建てのウッドハウスがあった。


「さて、目的地に着いたのだがその前に君たちには健康な体になり、そしてその汚れた体を綺麗にしてもらおうか」


 馬車を止め、積み荷に乗せられた奴隷たちは俺の言葉を聞き『いきなり何を言っているんだ? こいつは』という表情で見つめてくる。

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