つい思ってしまう
そして、たくさんの奴隷を抱えるという事は奴隷の数だけ俺はその奴隷達の人生を背負っているのだという自覚が屋敷を手に入れたことにより、より一層強くなってくる。
犬や猫を飼うというのではないのだと頭では分かっているつもりではあったものの、それでもどこか今まではそれに近い感覚であったのだろう。
そもそも犬や猫、そして小鳥達ですら、その子達の一生を面倒見なければならないという責任は重いのである。
それが人間、それも複数人の大所帯ともなれば尚の事。
今までは森の中で奴隷達を匿うという非現実的な環境が、どこか他人事の様に思えていたのだろう。
それが今現実として受け止めてしまった責任という重圧に吐きそうなのだが、しかしながらここで俺が吐いてしまうと、奴隷である彼女達を不安にしてしまいかねないので踏ん張りどころである。
子供を持った父親というのはこういう気分なのだろうかと、つい思ってしまう。
奴隷達が笑顔で暮らせるように頑張ろう、俺はそう強く思うのであった。
◆
「おい来たぜ……」
「本当、美人だよな。 こいつらの主人が羨ましいぜ。 どうせ毎晩お楽しみ何だろうな」
「そういえばそのご主人様とやらがあの没落貴族の別荘を買い取ったらしいぜ」
「あぁ、だからここ最近街中でよく見るのか」
いつも騒がしい冒険者ギルドが、とある四人の女性達が入って来る事によって急に静まり返る。
彼女たちの種族はエルフ、ヒューマン、獣人、ドラゴノイドとバラバラなのだが、そのすべてがとびっきりの美女という事と皆が奴隷であり、そして皆同じメイド服を着ているという点は同じであった。
当初こそ彼女達の美しさに良からぬことをしようとした連中がいたのだが、彼らは全員今では大人しく彼女達を見つめているだけである。
彼女達に絡んだ男達は皆言葉にするのも躊躇われる様な事をされて返り討ちにあっているのだが、あえて言うのであれば男性達の息子が縮み上がるような事をされたとだけ言っておこう。
そんな彼女達は今カウンターで受付嬢から説明を聞きながらクエストを選んでいるのだが、そんな彼女たちに筋骨隆々とした巌の様な男性がいやらしい表情を隠そうともせず近づいて来るのが見えた。
「おい、だれの奴隷か知らねえが女を冒険者にして働かせるような男なんか大した事ないだろうっ!! どうだっ! 俺の奴隷にならないか? なんならそのクエスト手伝ってやっっても良いぜ?もちろんただでとは言わないがなぁっ!!」
「なるほど、このクエストをクリアすれば私たちのパーティーランクを一つ上げる為の実技試験を受ける事が出来るという事ですね?」
「え、ええ。 そそそそ、そうです」
「てめぇっ!! 無視してんじゃねぇよっ!!」




