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面倒を見ると誓った

「今現在だって席が隣同士でただでさえ──」

「──嫌です」


 普段は俺に忠誠を誓っていると言うだけあって聞き分けは良く、たった数日ではあるもののブリジットが俺の言う事を聞かないのは初めてである。


 それもここまで頑なに。


 一体何故? と一瞬は思うものの少しブリジットの置かれた状況を考えてみれば仕方がないのかもしれない。


 というのも、今現在彼女は友達であるスフィアは罪悪感からか避けている節があり、その流れでクラスメイトやクロード殿下も避けている。


 そしてその原因を作ったのが自分の父親であり、家族で信用できる者は使用人含めていなかったのだろう。


 今ブリジットが信用出来ると確信を持てる相手は殺されかけたスフィアと俺だけであり、実質俺だけという事になる。


 誰が裏で今回の事件に繋がっていたのか、まだ十五歳である彼女には到底調べ上げる権力も財力も経験も無い。


 それは、言い換えれば今のブリジットにとって俺だけが心を許せる唯一の相手。


 だからこそ、ブリジットは俺と隷属契約をしてでも側にいる事を選んだのだろう。


 前世の日本ではまだまだ子供と言える年齢で、ブリジットなりに生きる為に必死で、それでもやはり潰れそうで、その拠り所が俺であるのだと推測する。


 だからこそ俺と離れる事を、それが例え周りを欺く為だとしても、忠誠を誓ったと言った相手の言葉であったとしても、ブリジットは耐えられなかったのだろう。


 そこまで考えて俺は深い溜息を吐く。


 もしかしたら考え過ぎなのかもしれないのだが、考え過ぎくらいが丁度いい。それが面倒を見ると誓った俺の責任だと思う。


「分かったよ。 俺の負けだ。 全く、世話の焼ける奴だな、お前は」

「あ、ありがとうございますっ! ご主人様っ!!」


 そして俺はそう言いながらブリジットの頭を撫でるのだが、俺の言葉を拡大解釈したブリジットにより明日から地獄が始まるとは、この時の俺は想像すら出来なかった。





 朝、いつも通り俺を起しに来る仕用人はいない。


 いくらクヴィスト家の仕用人は俺の傘下に堕ちたと言ってもその事がバレては元も子もない。


 怪しまれず、ただバカで無能でプライドが高く他人は見下し、家族だけではなく仕用人にまで嫌われている。


 それがクヴィスト家の、この世界の俺であるのだから。


「チッ、最悪。 朝からゴミの顔見てしまったじゃない。まさか、私達と一緒に朝食を取ろうと思ってるんじゃないでしょうね?」

「朝から最悪だね。 早くここから離れよう。クズが感染る」


 カイザルもクズだが、そのクズを作ったのは間違いなくこの家族だ。

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