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精神が耐えられるはずもなかった





 とりあえず思い出せるだけの記憶を全て極秘ノートに書き写し終わり、俺はのびをする。


 窓の外へと視線を向けると太陽は真上に上っており朝目覚めてから数時間以上経っていることを教えてくれる。


 にも拘わらず俺が記憶を書き写している数時間誰一人としてこの部屋へと訪れなかったという事実にため息と共にそりゃそうだよなと思ってしまう。


 そもそもこの俺カイザルの記憶が正しければ、以前までの俺は使用人へと誹謗中傷恫喝は当たり前に行っていたし、前世の記憶が正しければ度重なる悪行や改善しない素行の悪さに両親や弟や妹にまで嫌われている。


 勿論使用人への態度も両親は知っており、使用人を守るためにも俺へ拘わらなくてもお咎め無しとしている為、口を開けば見下した態度で罵詈雑言が飛んでくる俺の世話をわざわざしてくれる使用人などいるはずがなかった。


 そう、公爵家の長男である俺のもとへと誰も訪れないのは身から出た錆びそのものである為当然と言えば当然である。


 しかし、この家族と使用人の態度がより一層カイザルの心を捻じれさせ、それと同時に誰も信用する事が出来なくなってしまったという背景がある。


 ではなぜカイザルは捻くれていったのかというと魔術や剣術の才能もなく、それとは逆に弟や妹は才能に溢れているにも関わらず公爵家の長男。


 その為カイザルが抱えるコンプレックスは凄まじく、幼い心を捻じれさせるにはそう時間はかからなかった。


 それでも両親から弟や妹達と平等に愛情を注いでもらっていればまだ耐えれたのかもしれないのだが、何かする度に出来損ない、公爵家の恥と罵られる自分と、何かする度に褒められ、自慢の息子、娘だと言われる弟と妹。


 そんな光景を見続けたカイザルの精神が耐えられるはずもなかった。


 だからといって犯罪に手を染めて良いわけではないのだが、カイザルもカイザルでネグレクトの被害者であることは間違いがない事だけは、誰がなんと言おうとこの俺だけは認めてあげなければならないと、そう思う。


 そして俺は窓の外で「今日は朝食に兄様が来なくて久しぶりに美味しい朝食が食べれましたっ!」「ほんと、何で生きているんでしょうね」「まぁ、そう言うな。 将来弟であるダニエルへ家督を継いだとしても認めたくはないが公爵家の長男なのだ。 消したいのはやまやまなのだが、消したことがバレたら出来損ないのせいで我々公爵家が危うくなる」「学園を卒業するまでの辛抱ですよ。 学園さえ卒業すればクヴィスト家を追い出せる口実はいくらでもございますとも」という実に楽しそうな家族の話し声が聞こえてくる。


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