没落
そしてブリジットは語り始める。
この帝国には公爵家が四家存在しており、それぞれが東西南北にある地理的にも重要な土地を収めている。
そしてその四家の力関係の均衡が崩れてしまうと帝国貴族に亀裂が入り、最悪国家転覆もあり得る(といってもよほどの事がない限りあり得ないのだが、それでも可能性はゼロではない)為、特に家と家、権力と権力の繋がりを得る事となる次期当主の婚姻は毎回慎重に慎重を重ねて選ばれる運びとなっていた。
今回俺の婚約も当然選び抜かれて問題がないという事でスフィアが選ばれたのだが、そこにとある家が邪な考えを持ってしまったのだ。
それが我が家、古くから続く皇族の護衛に携わっており、騎士爵から新米兵士たちまで纏め上げる武闘派貴族である公爵家の一つ、モーデル家である。
モーデル家とクヴィスト家は四公爵の中でも特に仲が悪く、犬猿の仲として誰しもしっている程有名であり、それが原因でブリジットもつい最近までは何の根拠もなくクヴィスト家を忌み嫌い、特にスフィアとの婚約破棄をした俺の事は殺したいほど嫌いだったそうだ。
そしてスフィアは男爵家であるラヴィーニ家の長女なのだが、その母親が一代貴族の騎士爵位の長女であり、その父、スフィアからみて祖父にあたる人物はまだご存命である。
本来であれば、スフィアの祖父は一代貴族でしかないため権力もほぼ無いに等しく、男爵家と公爵家のとの差も大きいため今回カイザルの行いは、クヴィスト家がラヴィーニ家に多額の賠償金を支払うだけで済んだのだが、立場が逆であれば殺されてもおかしくない程の事である。
そして、カイザルがこのような事をしでかした事と、席替えが変わったからといって何故スフィアをモーデル家は殺さなければならなかったのかなのだが、簡単に言うとモーデル家にとって手足も当然である騎士爵を裏で操り、ラヴィーニ家、ひいてはその子供たちを真綿の様にゆっくりと洗脳していったのである。
当然、その様な環境で育ったスフィアは見事モーデル家の傀儡の出来上がりである。
そして、育った環境のせいでもともと毛嫌いしていたクヴィスト家、その中でも暴君という悪名が定着し始めていたカイザルの元へ嫁がせた後、甘い言葉でスフィアをクヴィスト家のスパイとして使い、クヴィスト家を没落させる。
そもそもモーデル家の財政は厳しくここ最近赤字続きであり、何とか持ちこたえているような状況なのだ。