鈍感で唐変木
「では、その時は私とモーリーも一緒に子作りに参加させてもよろしいかしら?」
「……はい?」
せっかく綺麗に纏まりかけたというのに、ここにきてカレンドールがちょっと意味の分からない(分かるけど理解したくない)事を言い始めるではないか。
「学園を卒業する時期となると私もモーリーも婚約者ではなく正妻と第二夫人という立場だと思うのだけれども、そうなってきますと妻である私たちよりも先に同級生とも言えども婚約者ではない奴隷に先を越されるというのはいくらなんでもあんまりだと思うのだけれども?」
「ぐぬっ…………」
このまま隠し通して有耶無耶にしてやろうと思っていたのだが、そうは問屋が卸して来れないようである。
「私は別に今までと変わらず研究をさせてくれて、こうしてたまに話してくれればそれで──」
「モーリーは、自分とカイザル様の血を引いた子供がどのような子になるのか興味はないのかしら? もちろん、どんな子供でも愛しい事には代わりないので、当然愛する事はできますが、モーリーとカイザル様の子供ですもの。 きっと私たちでは想像すらできないものを開発してくれたりモーリーの話を理解して会話ができるかも知れないわよ? ですが、ここで仕留めないと一生なぁなぁにされて自分達の子供を拝めないという可能性はゼロではないのだけれども、モーリーはそれでも良いと言うのかしら? カイザル様の唐変木さは身をもって体験していると思うのだけれども? そもそもカイザル様はこと恋愛事に関しては凄まじく、わざとではないかと思えるほど鈍感で唐変木なので、もうこんな機会すら一生訪れない可能性だってあるのよ?」
「──良いと思っていましたが、やっぱり私もカイザル様との子供が欲しいですっ!!」
なんだろうか? 物凄いディスられているんだが……。 しかも全てまる聞こえであり、カレンドールは隠そうともしていないではないか。
しかしながら数多のエロゲや恋愛ゲームをプレイして何百人と女性を攻略してき上に、エロ漫画やラブコメ、少女漫画などで予習復習も欠かさず前世では過ごしてきた、もはや恋愛検定があれば二級レベルの俺に向かって唐変木とはよく言えたものでる。
こればかりはやはり訂正するべきだろう。
唐変木だと思っていた俺が、実は恋愛マスターだと言う真実を知ったカレンドールはどのような表情をしてくれるのか今から楽しみである。
そう思い、俺が唐変木であるという事を訂正しようとしたその時『ほんと、カイザル様って唐変木ですよね……!』『なんで恋愛事が絡むとこうも鈍感になるのか……』『でも、多分そのおかげでこの会話も聞こえてないか聞こえてても自分のことではないと思ってくれるので堂々と喋れるのですが……』『まぁ、だからこそカレンドールさんも堂々と喋れているのですが……カイザル様本人の前で言うなんて流石正妻候補ですね』と言う五人の会話がどこからともなく聞こえてくるではないか。