未来の俺へぶん投げ
しかしながらそのことが悪かったのだろう。
ブルジットが俺の赤ちゃんが欲しいと言ってくるではないか。
もうちょっとこう、オブラートに包むとか言いようがあっただろうに、何故直球ど真ん中を投げてくるのか。
そして、真剣な表情のブリジットと、複数の気配。
その時俺は確信する。
今この部屋には俺たち以外にも俺の奴隷が隠れていると。 そして、その隠れている奴隷達もまた、俺がブリジットと子作りする事を願っていることに気づいてしまう。
むしろ気づかない方がおかしいくらい多方面から念が送られているのである。
そもそもここまで来ればもはやテレパシーではないのかと思えるくらいに子作りに対する圧が凄すぎるのだ。
何故そこまで、と思うのだが、ここで断るとどうなるのか想像もつかないのが恐ろしい。
それこそ奴隷達全員に謀反を起こされれでもしたらと思うと、俺はブリジットの要求を断る勇気が持てない。
これはまるで喉元に研いだばかりの包丁を突きつけられているような、そのような気分である。
「わ、わかった……子作りしよう」
そして俺は、折れた。 言い換えればこれは戦略的撤退である。
この瞬間カレンドールとモーリーが『私も言っておけば良かったっ!!』と、モノ凄く後悔した表情をしていたのが印象的だったのだが、先ほども言ったようにこれは戦略的撤退なのである。
そう、撤退だ。
まさか俺が了承するとは思っていなかったのか「まさか了承してくれるとは思ってなかったから……こ、心の準備が』と、顔を真っ赤にしながら呟いているブリジットと、一気に圧が消えてどこからともなく、まるで勝鬨をあげる法螺貝の音が聞こえ始めるのだが少し待ってほしい。
「だが、学園を卒業してからな」
「さ、先にお風呂入ってきましょうか、カイザル様からお風呂に入ります? そ、それとも一緒に……え? が、学園を創業してから?」
「あぁ、そうだ。 やはり子供ができたせいでブリジットが学園を退学とかになったら俺は一生後悔するだろうし、何よりもお互いもう少しだけ大人になってからの方が出産時の母体へのダメージはマシになるだろうから結果産まれてくる子供へのリスクも減るだろう」
そう、学園を卒業するまで何かしら良い言い訳を考えておけば良いのである。
そのなも『未来の俺にぶん投げ大作戦』だ。
「そ、そこまで私と、そして私たちの子供の事を考えてくれるなんて……」
そしてブリジットは俺の説明を聞いて良い方向へ勘違いしてくれ、感動した後妄想をし始めたのでとりあえずは危機は脱したとみて良いだろう。




