俺じゃなきゃ見逃しちゃうね
「去勢て……無理矢理じゃないだろうな?」
「無理矢理だなんてとんでもございませんっ! みんなちゃんと去勢の方が良いと自ら選んだ結果ですからっ!!」
いや誰が好き好んで去勢したいと、それもこれだけの人数がそう思えると言うのか。
そうはならんやろ、とは思うものの実際に目の前で起こっているのも事実なわけで、そこらへんあまり深く考えない方が精神的にも良いような気がしてきた。
間違いなく去勢の方がマシだと思えるような二択を迫った事は間違いないのだろうから、知らぬが仏という事なのかもしれない。
「まぁ……あまり深くは追求しないが、それでも奴隷にするかどうかは本人の意思を尊重するからな? 無理矢理奴隷にするのは流石に俺も賛同できな──」
「お、お願いだっ!! 私達をお前の奴隷にしてくれっ!! 奴隷にしてくれるんだったらなんだってしてやっからよっ! だから頼むから私達を奴隷にしてくれっ!!」
そして俺が本人に奴隷に成りたいという意思が無ければ奴隷にすることはないと言おうとした所、顔立ちはラフィーに似ているが、体格はラフィーより一回り大きくして筋肉もついている女性が悲痛な表情で俺に向かって『奴隷にしてほしい』と懇願してくるではないか。
その姿は明らかに普通ではないのは一目見て理解できる程にその女性は必死であった。
まるで奴隷にして貰えないと殺されると言わんばかりである。
「お姉ちゃん、勝手に頭を上げて良いって私言ったっけ?」
「い、言ってねぇ……言ってない、です……」
「そうだよね? しかも私のご主人様に馴れ馴れしく喋るだけではなく敬語すら使えてないし」
なんだろう? 見てはいけないもの俺は見ているような感覚になってくるのは気のせいだろうか?
「ラ、ラフィー?」
「はいっ!! ご主人様っ!! どうしましたっ!?」
うーん、この切り替わりよう。 俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「その、言い難いんだが無理矢理とかではないよな?」
「違いますよ。 それに、気になるんでしたらご主人様が直接聞いてみては?」
「分かった、それもそうだな。 後は俺が対応するからラフィーはもう戻っていいぞ? 一応ありがとうな? 俺のために」
そう言いながらラフィーの頭を撫でてあげると、目を細めて幸せそうな表情をする。
その表情からは、まさか目の前の光景を作り出す人物には見えないんだがなぁ……どうしてこうなったのやら。
「は、はいっ!! これからも精進しますっ!! それではっ!! 君たち、ご主人様のいう事は絶対だからね。 もしこれを破ったりしたらどうなるか分かっているとは思うけど。 ご主人様、それでは私はこれにて失礼しますっ!!」
とりあえず、ここにいる人たちは間違いなくラフィーの前では自分の意見を言えないと思った俺はひとまずラフィーをこの場から退場させる事にする。
 




