返答次第では容赦しませんわよ
そして自分の事を剣士であるという男性はわたくしの姿を見ただけでわたくしの事を魔術師ではないと言うではないか。
確かに、世間一般から見て魔術師とはまず魔術師用のロッドが無ければ話にならないので、その魔術師の命とも言えるロッドを持っていないわたくしを見て彼はわたくしの事を魔術師ではないと判断したのだろう。
それは何も間違った判断ではないのだが、わたくしが魔術師であると答えると、今までわたくしに向けていた警戒心を解き、既に戦闘が終わったかのような雰囲気へと変化していくではないか。
その彼の態度を見てわたくしは怒りが沸々と湧き上がってくる。
彼はわたくしの事を警戒する必要もない雑魚であると判断したのである。
この、ブラックローズの一員であり、カイザル様の奴隷であるこのわたくしに対しである。
わたくしに対しての侮辱であればまだ耐えられる事ができるのだが、わたくしを通してブラックローズやご主人様であるカイザル様まで間接的とはいえ侮辱されると言うのは、わたくしにとっては到底我慢などできる訳がない事なのである。
そう、簡単に言うとわたくしは生まれて初めてブチギレていたのである。
エルフの里に住んでいる同族達に裏切られた時だってわたくしはここまで怒る事は無かったのである。
「今、あなたわたくしが魔術師ではないと勝手に判断して警戒心を解きましたわね……それは、一体どういうつもりですの? 返答次第では容赦しませんわよ」
「は? いやいや、だってお前さん自分の事を魔術師って言ってるが、魔術師じゃないんだろ? しかも何故それが俺にバレたかも分からないくらいのレベルなんかたかが知れているし、もし魔術師じゃなくて他に戦闘職専門だったのならば尚更ロッドを持っていないにも関わらず魔術師だなんて言う訳がねぇだろ。 本当に、馬鹿だよなぁ。 自分から『これはただのハッタリです。 私には戦闘経験はありません』と言っているようなものだからな。 分かったらさっさと俺に犯され、べフゥッ!?」
まだ相手の会話は終わってなかったのだが流石のわたくしも我慢できずに思わず相手の右頬をぶん殴ってしまう。
「言いましたわよね? 返答次第では容赦しないと。 あと、勘違いしているようなのでお教え致しましょう。 魔術師の中でもロッドを必要としない魔術師がいるんですのよ? そしてそれをご自身の身で身でもって知ってくださいな」
そしてわたくしは先ほどとは違い拳に魔力を込めて、ぶっ飛ばされてまだ脳へのダメージが残っているのかふらつきながら立ち上がってきている自称剣士へと一気に距離を詰めて殴るモーションへ入る。
「わたくしは魔術師は魔術師でも打撃系魔術師ですわっ」




