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やっぱりあいつは屑だったのだ

 ワイバーンを使役できる程までに大きく育つ事ができた組織である。


 ならばそこまで育つまでに博打を打つような行為はしてこず、確実かつ堅実に完璧にこなせる悪事にのみ手を染めて来たのであろう。


 軽い万引き等の犯罪であろうとリスクが高ければ行わず、人さらいや殺人などといった犯罪でもリスクが低ければ行う。


 損得勘定ではなく、命あっての物種というのを第一に考えて来た事が伺えて来る。


 そして今現在、賊三名相手に怯むことなくゆっくりと近づいて来る俺を見て彼らは俺の事を『賊三名くらいであるならば余裕で倒せるからこその余裕』と受け取り、この場から逃げる判断をしたのだろう。


 決して奢る事無く冷静さを失わず相手を見極める洞察力に判断力は見事だと俺は思う。


 悪事ではなく真っ当な方向で行動していたのならばここまで稼ぐ事は出来ずとも今頃にはワイバーンではなくギルドからの厚い信頼を得てそこそこの暮らしを日のもとで堂々と暮らせていただろうに、どこで間違えてしまったのか。


 もしかしたら社会やギルド等のルールや常識といった物が嫌で賊へ落ちたのかもしれないのだが、結局賊には賊のルールがあり、守らなければならないというのに。


 そして、俺から心の中で蔑まれている三名は、俺の発動した罠系魔術により足を巻き付けた蔦に気づいていなかったのかそのまま逃げだそうとして全員絡みついた蔦により足を取られて頭から地面へとダイブしていた。


「貴様たちが逃げるために時間稼ぎしていたのだから、その時間を有効活用させてもらって逃げられないように魔術で足を縛り上げていたのだが、どうやら全員気づいていなかったようだな」


 しかし、彼ら唯一の失敗を上げるとすれば、俺を見た瞬間にスフィアを捨てて逃げなかった事である。


 そして俺は彼らが逃げられないように縛り上げると召喚魔術で鷹を召喚すると、ギルドへ賊を三名捕まえた事を報告するように命令をして飛ばすと、一件落着とばかりにこの場を後にする。


 この時俺はまだ経験の浅い現実での戦闘行為、それも対複数戦という事で、いち学生程度の尾行すら気付けない程、かなり興奮していたのだと後になって知る。


 この時、頬を染めるスフィアと、顔を青ざめるブリジットがいる事に気付けていたのならばと近い将来後悔するのであった。





 私は夢でも見ているのだろうか。


夢であったらどれ程良かったか。


 カイザルを監視していた私なのだが、スフィアが道から外れて森の中へと入っていくのと同時にカイザルが気配を消してスフィアを追いかけるのが見えた。


 『ほれ見た事か』『ついに本性をみせた』『やっぱりあいつは屑だったのだ』そんな気持ちが私の中に溢れてくる。


 しかし、その奥で見た光景は黒い衣装に黒い鬼の仮面を被ったカイザルに、スフィアを誘拐しようとする三名の賊、そしてモーデル家の育てているワイバーンであった。


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