生きてさえいればそれでいい
「ご主人様は武力で解決は最終手段であるといつも口酸っぱく言っているでしょうっ!? 私たちブラックローズとしての行動はご主人様の取る行動と同等であると思って行動しなさいといつも言っているでしょうっ!? それに、出会って即襲撃なんてはしたないし美しくありませんっ! こんな、美しくない粛清方法は私たちのご主人様には相応しくありませんっ!! 最初は交渉からスタートして、それで断るようであるのならば少しずつ相手の周りから力を削いで行き、相手がどこで折れるかを考えながらギリギリを攻めて行くのが美しいんじゃないのっ!!」
「え……流石にそれはウチ、ドン引きっすけど……」
一体何が起きているのか、そしてどうやってこの結界をすり抜けて入って来たのか分からないのだが、新たに仲間であろうメイド服を着た女性が乱入してくると、件の女性の頭を『パシンッ』と叩くではないか。
とにかく分からない事だらけで頭がどうにかなりそうなのだが、新しく来たメイドのお陰で俺達はとりあえず殺される事は免れたとみて良いだろう。
ちなみに、初めに来た女性は金髪ショートカットにした狐のような雰囲気の美しい女性で、後から来た女性は黒髪長髪で妖艶な雰囲気を醸し出している女性である。
そして、黒髪の女性の胸は服の上からでも、今にもこぼれ落ちそうな程豊満なのだが、金髪の方はまるで母親のお腹の中に忘れて来たのかと思える──
「アンタ、今ウチに対してかなり失礼な事想像してないっすか? 死にたいっすか? 今すぐ死にたいっすか? どうなんすか? ん?」
──と思ったのだが、おそらくまだ成長途中であろう。 これからに期待である。
「……………………気のせいのようっすね」
どうやって俺の心を読んだのか分からないのだが、とにかく俺は九死に一生を得たようである。
そして唯一分かった事と言えば、コイツらは決して相手にしてはいけない化け物であるという事である。
もはや人間であるかどうかも怪しい。
とりあえず今この場を乗り切り、生きのびる事が出来たのならば、俺はこの世界から足を洗い表の世界で田舎にでも引っ越してひっそりと生きようと強く思う。
生きてさえいればそれでいい。
こんな化け物がいる世界では命がいくつあっても足りないではないか。
「あ、そうそう。 ここにいるメンバー全員国王陛下含めてタダで帰れると思ったら大間違いっすよ。 一匹残らず逃さないっすから。 違法奴隷がどれほど罪深き行為であるかその身体で分かってもらう必要があるっすからね」