ほんのちょっと目を離した隙に
「無理して立とうとすると骨が折れるっすよ?」
そして件の女性は目に見えない謎の力によって床に押し付けられいる俺達を、まるで羽をむしり取った虫ケラを見るような目で見ながらそんな事を言うではないか。
「そう言えば、おっさん。 さっき許さないだとか何だとか言ってたっすけど、許さないのはむしろウチらの方っすから勘違いはしないで欲しいっすね。 ちなみに帝国では既に違法奴隷を取り扱っていたり繋がっている奴隷商や裏組織などは全て粛清させてもらったっすから。 しかし王国が作り育て上げた暗部という、ある種の国が認めた闇の組織の面々というわけで少しは骨がある者が一人くらいはいるとは思ったっすけど護衛で連れてきた者達含めて全然ダメじゃないっすか。 でも、それは君たちがダメなんじゃなくて仕えるご主人様の格の違いっすから恨むのならそこで悶えている国王陛下とやらを恨む事っすね。 さて、誰から死にたいっすか?」
もし彼女に攻撃をされる前であれば、戯言又はハッタリであると一蹴したであろうし、自分も含めてここにいる者達であまりの分かりやすい嘘に怒るどころか笑っていたかもしれない。
しかしながら彼女に攻撃をされ、実際こうして身動きが取れず彼女に殺されるのを待つだけという現状が、彼女の言う言葉が本当であると語っている。
そして万が一彼女の見えない攻撃から抜け出せたところで国王陛下がこの見えない攻撃から抜け出し、この部屋から出ない限りは我々は逃げることも助けを呼びに行くことも、現状を外へ伝える事すらできないのである。
さらに国王陛下は足に何らかの方法で攻撃をされている為、この見えない攻撃をされていなかったとしても痛みで立つ事すらできない状態なのである。
そこへさらにこの見えない攻撃までされては到底この部屋から逃げる事などできようはずがない。
これは俺達が今からこの、まだ若い小娘たった一人に何の抵抗も出来ず、そして相手が行使した攻撃の内容すら何も分からずに殺されるという事である。
もしこの世界に神がいるのだとすれば、これではあんまりにも理不尽すぎるのではないか? と問い詰めたい気分である。
しかし、どれだけ理不尽だろうが、許すまいと思おうが、この状況を覆す事などできるビジョンが見えない。
そもそもこの見えない攻撃も、国王陛下を襲った攻撃も何をされたのか、そして今現在何をされているのか分からないのだから対処のしようが無いのだからどうしようもない。
「ほんのちょっと目を離した隙に、アンタは何をやっているのよっ!? 今日は牽制だけって言ってたでしょっ!?」
「アイタッ!?」




