理解に苦しむっすわ。
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「ここ最近帝国の犯罪率が極端に少なくなっているらしい。 それも、一般人同士の小競り合いや低レベルな犯罪のことではなく組織だった犯罪グループだけが何故か減って行っている。 その最たるものが帝国の闇ギルド消滅事件だろう」
現在、王城の中で俺はここ最近調べて集めた情報を話す。
その俺の話を熱心に聞いているのは王国国王とのその周辺である。
近年、帝国は国力が低下しており、王国は我々をスパイとして帝国に送り戦争を仕掛けるタイミングを見計らっていたのである。
だからこそ、ここ最近帝国内にて犯罪組織が一気に減っていっているのが分かるのである。
その結果、見た目ではわかり辛いのだが街の雰囲気が以前と比べて気持ち明るくなってきているように感じる。
「これでは、帝国へ攻めるのはまだまだ先になりそうか……。 せっかくあの無能ジジイの代わりに俺が帝国を治めてやろうと思ったのに、安く買い叩けるのならば良いが欲を掻いてこちらも深手を負ってしまうと経済を立て直すのにも時間がかかる上に国土が増えた分だけ防衛も難しく、その間に今度は王国が周辺諸国から食い荒らされるだろうからな。 なかなか上手くいかないものだ。 それで、帝国から逃げてきたという元帝国闇ギルドに所属していた奴からは何か情報は得られたのか?」
そして俺の説明に国王陛下は深くため息を吐きながら少し愚痴を吐いた後、思考を切り替えたのか先月捕まえた元闇ギルドの人間の話へと話題を変える。
「そうですね、目新しいものといえば彼が闇ギルドのマスターであった事、三頭のドラゴンが帝国帝都へ向かって飛び去っていったのを見たという証言が嘘ではない事が分かったくらいであり、その他には新しい情報は出てきませんでした」
「なるほど、もう出涸らしすら残っていないと。 ならばもう用無しとして殺されるか王国の奴隷として飼われるか選ばしてやれ」
「畏まりました」
情報を全て吐き出させた後に殺すだけではなく奴隷として有効活用できる道もお考えになる国王様は流石であると感心する。
王国民相手ならばいざ知らず仮想敵国である帝国人相手に温情を見せるとは国王陛下の器のデカさが分かるというものである。
「まぁ目先の利益に眩んで滅んでいった奴らと同じ轍は踏むつもりもない。 仕方ないがまた帝国の国力が落ちていくのを待つしかないか。 では、そういう事で君たち暗部には今一度帝国を見張っていてくれ」
「畏まりました。 再度我々が完璧な密偵で帝国の情報を流して行きます」
「あー、それ無理っすよ? もう私たち秘密結社ブラックローズに全て筒抜けだから。 なんで帝国に蔓延る数多の大小様々な裏組織が消えていっているにも関わらず自分達だけはバレていないと思ったのか、私には理解に苦しむっすわ」