固い握手を交わす自信がある
そこで俺は命の恩人である彼女にまだ感謝の言葉を言っていない事に気づく。
「す、すまんっ! ちょっと色々信じれないような事が立て続けに起きてしまって少しだけパニックになってしまっていたようだ。 そして、俺の事を助けていただいた事を心から感謝する」
流石に自分でも助けてもらった命の恩人相手に感謝を伝えないのはあり得ないと思った為、俺は即座に頭を下げて謝罪をし、次いで感謝の言葉を述べる。
「あー、うん。 君のその気持ちはよく分かるぞ。 うん。 僕のご主人様が起こす奇跡を見ているような気分になってしまったのだなっ!! まぁ、あの恐鳥相手にたったの一撃で倒してしまうだなんて、普通に考えればありえないと思ってしまうその気持ちは凄い分かるからな」
そしてドラゴノイドのメイドはうんうんと頷く。
その姿を見てとりあえずは怒ってはいないようなので一安心する。
「因みに僕はとあるお方の奴隷でありメイドであるのだが、今君に教える事ができるのはこれだけなんだ。 名を明かせない事を詫びよう」
「いや、別に大丈夫です。 冒険者内でも本当の名前を隠している者の方が多いですし。 因みに僕も名乗る時は偽名を名乗っていますし」
「お? そうなのか? 僕たちドラゴノイドは自分の種族並びに名前には誇りを持っているので偽名を使う者はいないから新鮮だな」
どうやらこのメイドは名前を明かせないらしく、そのことを詫びてくるのだが、それでも俺を絶体絶命から助けてくれた事は変わらない上に冒険者にはそもそも本名を名乗る方が珍しいので、その点に関しては何も気にしていない旨を告げると、ドラゴノイドの習慣を話してくれる。
話には聞いた事あるのだが、やはり噂通りドラゴノイドはエルフと同じくらいプライドが高く、自分の種族に対して誇りを持っているらしいと知れた。
しかしながら、だからこそ目の前の美しいドラゴノイドが何故奴隷でかつメイド姿なのか益々分からなくなってくる。
彼女を見る限り今の現状に不満を持っているようには思えないし、むしろ奴隷である事こそが誇りであるかのように首に巻かれた首輪を見せつけてくる始末である。
何ならその首輪について触れて欲しそうにも見えるのだが、流石に奴隷相手にその証である首輪について聞く事は、それもドラゴノイド相手に聞く勇気はない。
そもそも奴隷の紋章ではなく首輪を使用するあたりこの奴隷の主人は変態なのだろうか? とも思ってしまうのだが、もし主人が男であるのならば同じ性癖の持ち主同士として固い握手を交わす自信がある。