メイド
そもそも、俺達もようやっとAランクの冒険者パーティーになったとはいえまだ成りたての上に個人のランクに関してはAランクがリーダー兼タンクである俺だけであり他は魔術使いがB+ランク、剣士がBランクなのである。
今まで安全第一でコツコツ積み上げて来たというのにほんの少し欲が出てしまった結果がこれである。
冒険者業は欲が出た者から死んでいく。 特にランクが上がったばかりは気を付けろとはよく言ったもので、そして俺たちもその類に漏れず相手の事をあまり知りもしないで『寝込みを襲えば今の俺達ならばいけるだろう』という油断が、この結果なのだから笑えない。
本来の俺達であれば一度他の先輩冒険者パーティーと一緒に協力しながら討伐方法を盗んで行くという方法を取っていたはずであるんだが、憧れのAランクパーティーになれたという高揚感が『今の俺たちならば討伐できるはず』という根拠のない自信を生んでしまったのであろう。
そしてその緩んだ意識をリーダーである俺が今一度引き締めるべきであるにも関わらず、他の二人に賛同してしまった。
これは明らかにリーダーである俺の判断ミスである。
しかし、まだリーダーである俺にはやらなければならない事が残っているのでいつまでも悔やんでいても仕方がない。
そして俺はリーダーとしての最後の仕事である『パーティーメンバーを逃す』という仕事を遂行する為に立ち止まり、目の前の怒り狂った恐鳥を見据える。
「ここは俺が食い止めるからお前達は早く逃げてこの事をギルドと、俺の妻に伝えてくれっ!!」
「…………グッ……ぜ、絶対に生きて帰って来なさいよっ!!」
「援軍連れて来て助けにくるから絶対にそれまでに生き延びろよっ!!」
そして二人のメンバーは俺の考えが伝わったらしく、涙を拭う事もせず最後の別れもそこそこに俺から背中を向けて駆け出そうとする。
二人には損な役回りをさせてしまって本当に申し訳ないと思ってしまう。
あぁ、ここまでか。
恐鳥が土埃を上げながら俺をその凶悪な足の爪で攻撃をしようとしてくるのが見える。
この恐鳥は空を飛ぶ事はできない代わりに発達した足で攻撃するのだが、その足は堅牢な鱗で覆われており切り落とす事も容易ではない上に、その先にある黒光する爪は岩をもバターのように切り裂く事ができるほどの切れ味を誇る。
俺の装備なんかきっと簡単に切り裂いてしまうだろう。
しかしながら俺もアイツらを逃すために簡単に死んでやるつもりも無い。
そして覚悟を決めたその瞬間、恐鳥が急に倒れ、よく見れば頭に風穴が開いているではないか。
「良かった。 何とか間に合ったみたいだ。 大丈夫かい?」
「メ……………………メイド?」