青天井
そう思ってしまうのは当たり前であろう。
だって帝国は彼女達に対して何もしなかったのだから、唯一手を差し伸べてくれたカイザル様に対して忠誠心を抱くのは当然の結果であると私でもそう思うし、彼女達と比べるとまだマシな環境である私ですらカイザル様に対して忠誠心を抱いてしまう程なのだから。
奴隷に落とされる程の境遇を経験した彼女達は、婚約当時に私が抱くカイザル様に対する忠誠心よりも比ではないだろう。
ブリジットさんやカレンドールさんは元々正義感が人よりも強い為に、そんな奴隷達の境遇と涙無しでは聞いてられない物語を聞くにつれて更にカイザル様への忠誠心を高めて行っているようなのだが、私はそこまで正義感が強い訳ではないので奴隷達の身の上話を聞いてもそこまでカイザル様への忠誠心は上がらなかった。
私もカレンドールさんと同じ様に形は違えど帝国のために帝国の民の為に知識で貢献したいと思っていたので正義感はそれなりに強いと思ってはいたのだがカイザル様の奴隷兼婚約者となって初めて理解する事ができた。
私は正義感の為に動いていたのではなくて、私の考えた政策がどのような結果を生むのかその答えを知りたい、国の資金で私が考えた道具の数々を実現させたいという気持ちが大きかった事に。
なまじ正義感は勿論人並みにはある分気付き難かった様である。
それはどういう事かと言うと、私の頭の中でしか妄想する事しかできなかった数々の道具を実現できる現環境を与えられた時点で私のカイザル様へ対する忠誠心は天井値であるという事である。
さらに私が考えた政策の数々も結果がどういう結末になるのかも、何故そのような事になってしまうのか解説付きで教えてくれるのである。
もはや私の忠誠心は青天井、今なおとどまる事を知らずに登り続けている。
ちなみにここ最近私の忠誠心が爆上がりした事はプロペラ飛行機という仕組みである。
まさか、鉄が鳥のように空を飛ぶことが出来るなど誰が想像できただろうか。
私ですらふわふわ飛べたら良いなー程度の『ヘリコプター』を考え出す事で精一杯だったのだから如何にご主人様の知能が凄いのかという事がこの事からも分かる。
さらにそれだけでは無く、今まで捨て値で売られていた低濃度の火属性の魔石を使って蒸気機関を動かすというアイディアまで思い付くなど最早神と崇めてしまうレベルである。
この低濃度の火の魔石なのだが低濃度だからこそ緩やかに魔石内部の魔力が消費される為に長時間熱を保つという性質を利用して、一箇所に集める事で高温を維持した状態で長時間利用できることしかない唯一のメリットを活かす事ができるのである。
しかもカイザル様はこの蒸気機関で発電装置を作って欲しいというではないか。