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鬼に金棒とはこの事である

 更にもう一つ、彼らにとって不幸な事は、俺が予め演習の時にスフィアが襲われるという事を知っていたという事であろう。


 まさに鬼に金棒とはこの事である。


 俺個人としては、いくら前世の記憶が戻る前の俺自身がやらかした事とはいえ、自分から婚約破棄しといて今さら助けるというのも釈然としないため、是非殿下に助けてもらいたいのだが、ここ数日の二人の様子を見た限りではそれも難しいだろうと溜息を吐く。


 それでも自分で蒔いた種であるのならば、自分で刈り取らねばなるまい、という気持ちが無いわけではないのだがとどのつまり罪悪感で潰されそうになるのを防ぐためという、どこまでも自分本位な考えからの行動である自分自身が嫌になるので、やらぬ善よりやる偽善と思う事により何とか精神を安定させる。


 まったく、要らぬ仕事を増やしやがった過去の自分をダッシュで殴りたい気分である。


 そもそも俺があの時婚約破棄をしなければスフィアが襲われる心配もなければブリジットの実家も犯罪に手を染める事も無かったのだ。


 そして俺の思考は初めに戻り堂々巡りを繰り返しながら、スフィアと、『マップ』に移るスフィアに敵意を向けている事を示している三つの赤い点を怪しまれない程度に気に掛けながら行動する。


「すみません、少しの間お花を摘みに行ってまいります」

「おお、そうか。ならば俺も一緒に手伝おうか」

「クロード殿下はここに残って説教です」

「何でだっ!アンジェリカよっ!!」

「何でもくそもありません。スフィア様も今の内に早く行ってらっしゃい」

「は、はいっ」


 そんなこんなで森の中を歩き続けて二時間ほどが経過し、目的地まであと半分といった所でスフィアに生理現象が訪れたようである。


 因みにスフィアとクロード殿下は別々の班であったのだが、何故かスフィアはクロード殿下の班と一緒に行動を共にしていた。


 これでは、どのルートか分からないのでこれからの対策ができないではないかと心の中で悪態を吐く。


 そして生理現象を直接言う訳もなく『お花を摘みに行く』と遠回しに同じグループであるクロード殿下と、男爵家長女でありドラゴンファンタジーナイト~愛のラビリンス~のヒロインの一人でもあるアンジェリカ・アンダーソンが、スフィアへついていくというクロード殿下を捕まえると、赤いウェーブのかかった長い髪に吊り上がった目を持つアンジェリカはまさにツンデレキャラクター然とした口調と態度でクロード殿下へと説教を始める。


 何だかんだで殿下と二人っきりになれて嬉しいのか険しい表情とは異なりその頬は朱色に染まっていくのが何だか可愛らしく思う。


 そんな微笑ましいアンジェリカを後にして俺はスフィアが消えていった方向へと足音を消して向かいながらマップを見ると、丁度赤い点三つがスフィアを囲み、物凄いスピードでこの場から離れていくところであった。

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