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素人が考えた妄想に過ぎない


 一瞬カレンドールの言っている事が理解できなかった。


 そもそも今まで私の頭の中で浮かび上がって来た妄想を話して理解できた者は、子供は勿論大人も含めて誰一人としていなかったのである。


 それがいきなり『カイザル様ならば理解できる』と言われてもそう簡単に『はいそうですか』と納得できるはずがない。


「そ、そんな分かりやすい嘘で騙そうとしても無駄ですよ……。 今まで色んな人に話して来たのですがその度にバカにされて「お前は妄想が過ぎる。 少しは黙ってなさい」と親にまで言われてしまうぐらいですから」


 どうせ私の妄想は何の知識も無いただの素人が考えた妄想に過ぎないのだ。


 その妄想を理解しろというのがそもそも無理な話しであり、子供の頃は『どうしてそんな事を言われないといけないのか』と思っていた親の言葉の意味も今になって分かるようになってきた。


 そんな時に今さら『私の妄想を理解してくれる』と言われた所で結局は『私の妄想を否定はせずに妄想は妄想として受け取られる』というだけである事は火を見るよりも明らかであり、子供の頃とは違ってそれぐらいの事は分かる年齢になったのである。


「そうやって逃げるつもりかしら?」

「に、にげるって、何でこれが逃げる事に繋がるんですかっ!? カレンドールさんはいつもそうですっ! あの時だって知識でこの国を支えたいと思っていた私に対して滑稽だなんて言いましたしっ!」

「それは……ごめんなさい。 今でもあの時の私の吐いた言葉は申し訳なく思っているわ。 あの頃の私はまだ子供で、同じ年で私と同じ志を持つ女性がいると聞いて、てっきり私と同じ方法でこの帝国を良くしていこうと鍛錬をしていたものとばかり思っていたのよ。 今では国をよくする為には武力ではなく知力こそが必要だという事も理解しているわ。 ですがだからこそ私の婚約者は貴女にも相応しい殿方をと思っていたし、それが私の背負った贖罪だと思っていたわ。 そしてそれはカイザル様こそ適任であると胸を張って言えます。 今更あの頃の事を謝られても遅いかとは私も思うわ。 けれども、最後に一度だけでいいので私を信じて欲しい」

「わ、わわわわわっ、分かりましたからっ! あの頃は私もまだまだ子供で意固地になっていたところもありましたしお互い様という事にしましょうっ!! 図面も書いて渡しますからっ!」


 そしてカレンドールさんはそう言って私に頭を下げて来た。


 家格が下の私に対してである。


「あ、ありがとうっ。 モーリーッ!」


 そう言いながら抱きついて来るカレンドールさんの笑顔は、たぶん一生忘れられない程に綺麗だった。

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