裏切り者
「ゼヒィーッ! ゼハァーッ!」
そんな感じで現実逃避できたのもものの数秒で私は肺に酸素を入れる事だけしか考えられなくなる。
エミリーは私と同じ文系だと思っていたのだけれども、ここまで体力的な差を見せつけられるとまるで裏切られたような感覚になってしまう。
いつも私と一緒に空いた時間は図書室で読書をしていたと言うのに。 まさかエミリーこそが裏切り者だったとは。
これはアレなのだろうか? ドリルの回転により生じたエネルギーをそのまま放出するのでは無く、体力として循環させているのではなかろうか? いや、そもそもそれならばドリルを回転させるエネルギーを体力に回せば良いわけで……まさか空気中のマナをエネルギーに変えているのではなかろうか?
そう考えればしっくりくる。
ドリルの根本から吸い込んだ空気とマナ、そして体内の魔力と混ぜて燃焼させる事によってドリルの先端部分へ押し込む事により圧縮させて膨大なエネルギーを生み出しているとすれば?
そしてその圧縮したエネルギーを先端から放出する事によりジェットエンジンとしても使用可能となり、音速を超えるスピードで空を駆ける事ができるのでは?
そして、きっと場面場面に応じて環境に適したドリルのスペアもあるのだろう。
あぁ、何故だか知らないのだがエミリーのドリルの事を考えていると未知なる技術が頭の中で無限に湧いてきてしまう……。
あ、エミリーのせいで脳を使ったせいで一気に疲れが……。
そして、私はここで意識を無くすのであった。
◆
「まったくもう、具合が悪いのならば予め言いなさいな」
目が覚めるといつの間にか私は保健室のベッドで眠ており、横を見るとホッとした表情のエミリーとカレンドールさんの姿がそこに会った。
「いえ、私はエミリーと違ってか弱いのであまり運動が得意ではないのです。 ええ、か弱いので」
「普段から運動をしていないからだと思いますわ。 か弱いというよりかは貧弱ですわね。 あとわたくしは健康的で引き締まったボディーなのでか弱くはないですが魅力的なプロポーションですわよ?」
そこはか弱いで良いではないか。 あと、私のお腹の下をつまみながら話さないでほしい。
一体私に何の恨みがあるというのか。
いやほんと、調子に乗って『エミリーと違ってか弱い』などという表現を使って御免なさい。
「それで、丁度モーリーさんも目が覚めた事ですし、私に聞きたい事って何でしょう?」
「流石にモーリー抜きで聞くのはどうかと思いましたのでわたくしからはモーリーがカレンドールさんに聞きたい事がある事だけ伝えておりますわっ!!」