ドリルの先端にプロペラ
「ですが、聞きに行ったところでどうにかなるようなものじゃないと思うんだけど……?」
「それはそうですけれでも、何でカレンドールさんがあんなクズを好きになったのか気にならないんですの? わたくしは気になりますわっ!!」
ぐぬぬぬ、他人事だと思ってっ! 絶対に面白がっているでしょうっ!!
そのギュルンギュルン回るドリルの根元に粒子の細かい砂を撒いて目詰まりさせてやりたくなるのをグッと堪える。
長髪の場合はそもそもドリルが無くとも頭に砂をかけられると、ただでさえ砂を落とすのに大変なのに、ドリル、それも二本の立派なドリルの接続部分ともなると最早落とすのも大変とか言うレベルではないだろう。
それに、そもそもベアリングの修繕費などを請求されても払えないし、思うだけである。
「何故だか知らないのですけれども何だか貴女にこの高貴な髪型を馬鹿にされているような感覚になるのだけれども、気のせいですわよね?」
「あ、当たり前じゃないですかっ!! そんな髪型──」
「そんな?」
「じゃ無くて、そのような高貴な髪型はエミリーさんくらいしか似合う女性はいないだろうなーと、少しだけ羨ましく眺めていただけですっ!!」
「そ、そうよねっ!! 当たり前ですわぅ!! でも、褒めても何も出ませんわよ?」
あ、危なかった。
もし私の心の中で思っていた事がバレたら今嬉しそうにギュルンギュルン回転している(ように見える)ドリル(髪型)によって私のお腹に風穴を開けられてしまうところでした。
それにしても、ドリルは口ほどに物を言うとい言葉が似合いそうなほど感情が髪の毛に現れているように見えるのは私だけじゃないはずだと思いたい。
「それでは、思い立ったが吉日とも言いますし、早速カレンドールさんに聞きに行きますわよっ!! どうせあの武道バカの事ですので今日も放課後は室内修練場にいるはずですわっ!!」
そしてエミリーは私にそのドリルを褒められて気を良くしたのか無駄な行動力を発揮して私の返答も待たずにすっ飛んでいくではないか。
そのスピードはまるでドリルの先端に推進力を上げるプロペラがあるかのようなスピードである。
私じゃないと早すぎてドリルの先端にプロペラがついている事を見逃してしまうね。
「って、のんびりしている場合じゃないわっ!! 早くエミリーの暴走を止めないとカレンドールさんにどう言い訳しても取り返しのつかない事になりかねないじゃないっ!! お願いだからこれ以上面倒事を増やさないでよぉぉおおっ!!」
なぜ私の周りの人間は私を平穏というものから遠ざけるのか。
今はただ静かに本を読んで過ごしたいだけなのに、激流に落ちた枯れ葉の如く周囲の流れに巻き込まれ始めているように感じるのは気のせいだろうか? 気のせいであってほしい。