トゥンク
『……す』
「す?」
『すみませんでしたっ!! 私が全面的に悪かったですっ!! 貴方様、いえ、カイザル様の実力ならば確かに私のお父様よりもお強いという事を否が応でも分からされましたぁぁぁああっ!! どうか、命だけは取らないでくださいっ!!」
そしてファルールは凄い勢いで土下座をした後に命乞いをしてくるではないか。
全く俺を何だと思っているのか。
鬼か悪魔かとでも思っているのだとしたら流石に傷付くんだが。
そもそもファルールの両親がいる前で娘の命を奪える人間はそもそもまともではないだろ。 そこまで行けばどこか頭がおかしい奴じゃん。
てか、命乞いをしてくるって事はマジでそう思われているとも取れるわけで。
『ど、どうか娘の命だけはっ!!』
『パ、パパッ!?』
そして俺の沈黙が余程こたえたのかファフニールが娘の命と引き換えに自分の命を差し出そうとしてくるではないか。
てか、ファルールは『お父さん』呼びから『パパ』呼びになっているし……。
きっと幼少期はパパ呼びで思春期に入ってからお父さん呼びに切り替えたのであろう。
って、今はこんな考察などどうでも良くて、とにかくこの勘違いしている親子の誤解を解かなければ母親までファフニールのように命を差し出すとか言いかねない。
「いや、別に良いから。 俺としてはちょっと戯れあった程度の感覚だからそこまで深刻にされると逆に困るから。 むしろ俺の方がファルール相手にやり過ぎたと持っているぐらいだから」
『ありがとうございますカイザル様っ!! カイザル様の器の大きさに私は感服していると同時に一生ついて行くと誓いましたっ!!』
『よ、よかったわねファルールッ!!』
『よ、よかったよぉぉぉぉおおおっ!!』
「とりあえず喜んでいる所悪いがファルールの怪我を回復するからあまり動かないでくれ」
そして俺はそう言いながらファルールに回復系魔術を行使してやると、傷ついた身体はみるみる癒えていき、剥がれ落ちた鱗も見事に再生していく。
──トゥンクッ!
ん? 今なんか少女漫画で恋に落ちた時の効果音のような音が聞こえたような気がするのだがきっと気のせいだろう。
「それで、どうしてお前達はわざわざ俺の元へ来たんだ?」
『そ、それでございますが妻と娘が我のこのカイザル様に貸し与えられた防具を見て自分達も欲しいと聞かなくてな……だが、ここまでカイザル様に迷惑をかけてしまった手前──』
「なんだ、そんな事くらいならば別に良いぞ。 どうせ持っていてもドラゴンの装備なんかドラゴンにしか使わないしな」