直前ガード
「ったく、面倒臭せぇ……」
そして俺は面倒くさいのだが攻撃を受けないと治まらないだろうとファルールの望み通り攻撃を受ける事にする。
しかしながらただ受けるはずも無く、ファルールの攻撃が俺の身体に当たった瞬間に俺の身体が白く点滅し、そして俺はそのまま攻撃された衝撃やダメージなど一切感じさせ無い動きで移動するとファルールの懐に潜り込んでスキル『掌底』を鳩尾っぽい部分に打ち込み、掌底を打ち込まれた周囲の鱗が剥がれ落ちながらファルールは数メートル吹き飛ぶ。
『きゃぁぁぁぁああっ!? ……な、何でっ!? 確かに私の攻撃は当たった筈なのにっ!!』
そしてファルールは先程の一連の流れで何が起こったのか把握出来ていないのか、またしても敵である(とファルールは思ってる)俺に何をしたのか聞いてくる。
本来、本当に敵であるのならば説明などせずに倒すところなのだが、実際は敵ではないし、戦っている相手に自分の技の説明をするというのはある意味男性の夢の一つであるシュチュエーションだと俺は思う。
あくまでも俺自身は興奮するというだけで面倒臭くはあるもののここまでくれば乗り掛かった船なので『解術』の時と同様に俺はファルールへと親切に教えてやる事にする。
「何でって『直前ガード』いわゆる直ガをしただけだな。 相手の攻撃が当たる瞬間にガードをすると硬直時間が無くなるテクニックだな。 あ、猶予フレームは八な。 プレイヤータイプ:アサシンならその攻撃スピードや変速的な攻撃により流石に直前ガードはし難いが、ファルールの攻撃はハエが止まれるくらい遅いから初見の攻撃でも簡単に直前ガードを合わせる事ができたというわけだよ。 ワトソン君」
何だろう、好きなゲームの説明をするのはどうしてこうも楽しいのだろうか。
『ま……』
「ま?」
『またイカサマしたわねっ!! ぜっったいに許さないっっ!! 私の攻撃がハエが止まるほど遅いと言った事を絶対に後悔させてやるんだからっ!!』
そしてせっかく俺が説明してあげたというのにファルールはなぜか激昂しながらまたもやイカサマだというとその大きな爪で切り裂こうとしてくるので直前ガードしてからファルールの顎を蹴り上げる。
『あぎゃっ!?』
「だからイカサマじゃないって言ってるだろ……」
そして魔術でも体術でもここまで差を見せつけられたというのに、ファルールはここからさらに小一時間は俺に食ってかかってくるのだが、流石にここまでくるとイカサマではなくて純粋に力量の差という事が分かったのか泣きながら土下座をしてくるではないか。