ちょろい奴め
そして俺はクロード殿下を、俺に一生噛みつけないようにしてやると意気込みながら闘技場へと向かう。
ちなみにブリジットとカレンドールも某スケさんカクさんのように、お供するのが当然のように帰宅せずに俺について来てくれる。
何ならいっその事、この二人に『やっておしまいなさい』と言ってクロード殿下をぶちのめしてやるのも良い手かもしれないな、とも考えるのだが、今回は俺そのものの存在をクロード殿下へ恐怖の象徴になるくらい刻みつけ、一生歯向かう気力すら湧かなくさせるのが第一目標であるのだ。
某世直しお爺さんごっこはまた別の機会でも良いだろう。
「フン、逃げずによく来たな。 それだけは褒めてやろう」
「そりゃどうも」
そして呑気にのこのことやって来たクロード殿下は開口一番やはりと言うか何というか俺の感情を逆撫でして来る。
俺が下手に出れば何もやり返さないとでも勘違いをしているのだろうか?
皇族という権力を自分の力だと勘違いするから盲目になるのだ。
「バカがよ」
「ん? 今貴様我に向かってバカと言ったのか?」
「いえ、気のせいです」
「それはそうだよな。 何故ならば俺は未来の皇帝でもあるのだからな。 言動と態度には気をつけるのだな?」
「頭の脳みそがくるみ以下の大きさの、知能指数がゴブリン以下の馬鹿だと申したのです」
「あ?」
そして、どうせこれからクロード殿下をボコるのならば、もうクロード殿下に対して取り繕う必要もない。
「よっぽど……よっぽど死にたいらしいな」
「良いからさっさと決闘しようぜ。 御託は良いから。 それで、俺が負けた時と勝った時の事を教えてくれよ」
「い、良いだろう。 俺も早く貴様をボコボコにしたいと思っていたところだしな。 俺が勝ったら一週間、ブリジットの所有権を俺に移してもらおう。 貴様が万が一、いや、億が一にでも勝った場合は俺が持つ全てを貴様にあげよう」
「あ、今の言葉、ちゃんと精霊契約で契約させて頂いたんで」
「なっ!? 貴様何勝手な事をっ!!」
「まさか、嘘ついた訳ではないですよね?」
「ば、馬鹿にするなっ! 貴様ごときにこの俺が負ける訳がなかろうっ!! 貴様こそこの俺を馬鹿にしやがってっ!!」
「じゃあ別に精霊契約をしても良いではないですか。 むしろ決闘開始前の手間が省けたと褒めて貰いたい程ですよ」
ちなみに、精霊契約による、契約不履行によるデメリットともあるのだが、俺はあえてその内容は隠してクロード殿下を煽る。
きっと今クロード殿下は怒りでその部分の確認をするという常識的な判断すらできていない事が、分かる。
少し煽れば周りが見えなくなるとは、ちょろい奴め。