見苦しいですわよ
もう授業が無いならこのまま学園にいる理由も無いのでサクッとクロード殿下を倒して帰ってしまおうかとも思い始めたその時、なぜかエミリーが俺の前までやってくるではないか。
そもそも俺はエミリーに失礼な態度をした覚えがないし、エミリーとは今までろくに挨拶すら交わした記憶もないくらい同じクラスで接点がないのだ。
「…………」
「何ですかね? 俺はエミリーさんに迷惑をかけた覚えがないんですけど?」
そしてエミリー・アンバーは俺の前までくると扇子を広げて口元を隠し、無言で睨みつけてくるではないか。
意味がわからないし、マジで睨まれるような事をした覚えがないのが逆に怖いんだが?
「迷惑をかけた覚えがないですって? わたくしからすれば本日クヴィストさんがドラゴンが接近しているというのに逃げずに学園へ登校している事自体がものすごく迷惑なんですけれども?」
もう意味が分からないし、学園へ来なければ来ないで後日クロード殿下からウザ絡みされそうなのに一体俺にどうしろと言いたのか? この目の前で睨みつけてくる金髪ツインドリルは。
きっとドリルの動力源にエネルギーを持っていかれている為思考があまり回らないのだろう。
ドリル回して思考は回さずってか。 うっさいわ。
「迷惑と言われましても、俺の何がエミリーさんの迷惑になっているのか全くもって理解できないのだが?」
「しらばっくれないで頂戴。 アナタの考える事などこのエミリー・アーバンからすれば手に取るように分かりましてよ。 どうせアナタもドラゴンの鱗が目当てなんでしょう?」
「いや、ちが──」
「だからこそ、こうしてカレンドールとブリジットを連れて来たのでしょう? バレバレですわ」
「そうじゃなくて、クロード殿下と──」
「あら、クロード殿下も登校しているだろうと言いたいのでしょうけれども、クロード殿下はアナタと違って武術も魔術も秀でておりますの。 その意味がお分かりかしら? 今ここでアナタだけが足手纏いという事ですわ」
「だから決闘──」
「言い訳はおよしなさいな。 見苦しいですわよ」
コイツ、人の話を聞かねぇぇぇえっ!!!!!!
あぁ、隣を見れば今にも掴みかかりそうなブリジットとカレンドールの姿と殺気を感じるんだけどっ!! お願いだからこれ以上二人を刺激しないように黙ってくれないかなっ!?
「ご主人様、この身の程知らずをぶん殴ってもよろしいでしょうか?」
「許可さえ頂ければどちらが立場が上か、一生逆らう気持ちが湧かないくらいに分からせてもいいのだけれども?」